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日本特有の「不審者」対策がもたらした負の影響
このように、「人」の外見から、犯罪をたくらむ者を発見するのは不可能だ。したがって、犯罪原因論に基づく防犯対策に有効性は認められない。さらに、このやり方では副作用も大きい。
例えば、無理やり「不審者」を発見しようとすると、平均的な日本人と外見上の特徴が異なる人の中に、「不審者」を求めがちになる。そうなると、不審者扱いされてしまうのは、外国人、ホームレス、知的障害者だ。
例えば、朝日新聞(2000年12月26日付)は「警視庁地域部が東京都内各署に配った防犯チラシに『中国人かな、と思ったら110番』などの表現があり、『配慮に欠ける』との指摘を受けた同部がこれを回収していた」と報じたことがある。
私がいただいた、知的障害児の親からの手紙にも、「防犯活動や巡回パトロールが活発になるに従い、不審者と誤解されてしまう事も多く、私達保護者や養護学校関係者は心を痛めております。勇気を出して外出しても、不審者と間違われたり、冷たい視線等に出逢い、外出嫌いやトラウマになってしまう子どもや保護者もおります」と書かれてあった。
これでは、差別や排除が生まれ、人権が侵害されてしまう。人権が尊重されない社会では、犯罪という人権侵害もはびこる。実際、残念ながら、間違った地域安全マップが多数作製され(実態は、不審者マップ)、そこには、知的障害者やホームレスが登場している。もちろん、私が考案した「地域安全マップ」は、犯罪機会論に基づいているので、そこには「人」は一切登場しない。
「不審者探し」で弱まる地域ネットワーク
犯罪原因論が行き過ぎると、子どもを避ける大人も増やしてしまう。
朝日新聞(2006年11月17日付)は、防犯ボランティアの言葉として、「気になる子供がいても『不審者と間違われるのでは』と声をかけづらく感じる」と報じたことがある。同年の福井新聞によると、滋賀県警察の捜査員が福井県で犯人を逮捕した際、地名を確認するため、近くの民家を訪問し、応対した小学6年生の女児に警察手帳を見せて住所を尋ねたところ、児童の話を聞いた母親が学校へ連絡し、学校は不審者情報として注意喚起の文書を配布したという。
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