コラム

北方領土のロシア軍近代化 公開資料で実像に迫る

2017年03月31日(金)19時00分

択捉島

・想定収容人員(軍人):1540名
-将校:230名(家族帯同)
-徴兵:293名
-契約軍人(兵士・下士官):1017名(うち、女性20名)
・その他の想定収容人員:300名
-他地域からの出張者(軍人):30名
-軍属:240名
-その他職員(ロシア銀行、FSB、捜査委員会、軍事裁判所、検察):30名

国後島

・想定収容人員(軍人):1108名
-将校:125名(家族帯同)
-徴兵:96名
-契約軍人(兵士・下士官):887名(うち、女性20名)
・その他の想定収容人員:260名
-他地域からの出張者(軍人):20名
-軍属:240名

北方領土の本当の人口

以上の想定に基づくと、北方領土に駐留する陸軍の軍人は出張者を除いて2648名ということになる。このほかに、図で示した海軍の地対艦ミサイル部隊や空軍のヘリ部隊も含めると、3500人というロシア側の自己申告は概ね信用できそうである。

このほかに将校は家族を帯同している者がいるはずだが、こちらについては想定が明らかでない。ただ、この資料では幼稚園と学校の収容人数が択捉島390名分(幼稚園150名分、学校240名分)、国後島225名分(幼稚園75名分、学校150名分)となっている。ここには海軍や空軍の将校の子供たちも含まれていると見られ、おそらく将校1名あたり子供1名強という想定なのだろう。これに将校の配偶者を加えると、1000人ほどの軍人家族が想定されているのではないか。

このほかに軍属が両島で500名、その他職員が択捉島に30名とされているので、概ね5000人ほどの軍関係者が両島に居住していると考えられよう。

我が国の外務省によると、択捉島の人口は3608名、国後島は7364名の合計約1万1000名とされているが、これは軍関係者を含まないとされるため、実際には公式統計の1.5倍ほどの人口があると見られる。

シミュレーターから装備を読む

前述の調達情報には、北方領土駐留ロシア軍の装備を推定する上でも興味深い記述がある。兵士の訓練を行うためのシミュレーターだ。これまで北方領土のロシア軍が保有している装備には曖昧な面が多かったが、どのようなシミュレーターを設置しようとしているのかによって、現在および将来の装備を推し量ることが可能である。

記載されているシミュレーターと、それに対応する装備は次のとおりである(内容は択捉島、国後島ともに共通)。

プロフィール

小泉悠

軍事アナリスト
早稲田大学大学院修了後、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究などを経て、現在は未来工学研究所研究員。『軍事研究』誌でもロシアの軍事情勢についての記事を毎号執筆

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く

ワールド

イスラエルが人質解放・停戦延長を提案、ガザ南部で本

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに最大5.98兆円を追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story