- HOME
- コラム
- ブレグジット後のイギリスから
- EU離脱か残留か 翻弄される英国民の今
EU離脱か残留か 翻弄される英国民の今
というのも、延長を認めるかどうか、認めた場合どれぐらいの期間にするのかを決めるのはEU側だからだ。しかも、英国を除く全加盟国の満場一致の合意が必要だ。また、延長を認めてもらうには、「十分な理由」がなければならない。果たして、2-3週間あるいは2-3か月延長したところで、下院が1つにまとまる可能性は・・・今のところ、かなり低い。
代案がない中で、「離脱を止めたい」という議員の思惑や、「合意なしでも離脱」という強硬派の動きなどがあって、予断を許さない事態となっている。
12日午後7時過ぎから始まった、メイ首相の修正協定案の採決の直前、議会の真向かいにあるパーラメント広場に集まった、離脱派・残留派の人々の声に耳を傾けてみた。
「国民の声を聞くべき」
議会入り口の門の前で、大きな旗を持って立っていた、ナイジェルさん。EUの色、ブルーの帽子には加盟国を示す黄色の星のアップリケがついていた。プラカードには「国民の声を聞け」とあった。
ナイジェルさん(撮影筆者)
「再度、国民投票をやるべきだと思っているよ」。
離脱は2016年の国民投票で決まった。あの時は僅差だった。「また僅差になってもいいの?」と聞くと、「いい。もしそうなったら、結果を受け入れる」。
離脱派と残留派との亀裂が深くなるのではないか?「必ずしもそうは思わない」。議論が続く議会の方を指しながら、「政治家が誰も決められない。メイ首相もひどいものだ。誰も彼女の案を好まない」
「メイ首相の案でいいのかどうか、離脱を規定する第50条を白紙に戻したいのかどうか、いろいろな選択肢を出して、国民に問うべきだ」。
セバスチャンさん(撮影筆者)
少し先で、パンフレットを配っていたセバスチャンさん。シャツの上には「合意なし」と書かれている。「離脱派?」と聞くと、「そうだ」。
でも、「右派的な意味で、『合意なし』を支持するのではない。僕は左派系だ」。
国民投票で離脱を支持したのは、保守系・右派が圧倒的だった。セバスチャンさんはずいぶん珍しい。一体なぜ、メイ首相の協定案に反対で、「合意なし」でも離脱したほうがいいと思うのだろう?
「左派系はもともと、EUに懐疑的だったんだよ。巨大すぎる、官僚的すぎるから。市場経済至上主義を推進しているから」。セバスチャンさんは「Brexit: How the Nobodies Beat the Somebodies」という本(2017年)を書いた作家(セバスチャン・ヘンドリー)でもあった。
【英国から見る東京五輪】タイムズ紙は開会式を「優雅、質素、精密」と表現 2021.07.26
メーガン妃インタビューで英メディア界に激震 著名司会者とメディア団体幹部の辞任劇を辿る 2021.03.31
英国で女性蔑視もヘイトクライムに含める動き 元巡査でさえも「声を上げにくい」現状 2021.03.19
帰宅途中で殺害されたサラさん 「女性が安心して歩ける環境が欲しい」と英国で抗議デモ続く 2021.03.18
英フィナンシャル・タイムズ記者が他紙のZoom会議を盗み聞き? 2020.05.08
「王室離脱」騒動の只中にメーガン妃の「ダメ父」がまた暴言──意外にも同情を集めている理由 2020.01.24
英総選挙、どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か 2019.12.14