- HOME
- コラム
- リアルポリティクスNOW
- パリ五輪のこの開会式を、なぜ東京は実現できなかった…
パリ五輪のこの開会式を、なぜ東京は実現できなかったのか?
「多様性と伝統の称揚」は今回が初ではない
ダイバーシティ(多様性)やジェンダー等の先端的な視点と、受け継がれてきた伝統文化を同時に称揚するといったコンセプトは、今回のパリ五輪が最初ではない。前回2021年の東京五輪もそうした試みの一つだったと言える。マンガのキャラクター等のサブカルチャーが伝統文化と絡み合い、各国のアスリートをもてなす。東京五輪こそがそうした視座を世界に先駆けて提示しえたはずだった。それは世界が今なお驚異の目で日本を見る問いかけ(なぜ日本はそれが出来るのか)に対する回答でもあったに違いない。
しかし残念ながら、コロナ禍による開催延期等、様々な混乱の中で企画は修正され、担当者も変更された。大友克洋原作『AKIRA』の「赤いバイク」が東京を疾走する光景を拝むことは叶わなかった。
パリ五輪開会式の充実ぶりを見るにつけ、なぜそれを東京五輪で出来なかったのかという釈然としない思いがつのるのは、おそらく東京五輪を総括できていないからだろう。例えば大会経費について、東京五輪組織委員会が公表した1兆4238億円という数値は、会計検査院によって1兆6989億円だと増額認定されている。経費の算出根拠に関する見解の相違であるが、問題なのは「開会式にいくら費やされたか」を含めた詳細が未だに開示されていないことだ(パリ五輪の経費詳細も現時点で不明だが)。
やりっぱなしではいけない。公金が支出された以上、国民に対する説明義務があるという抽象論だけではなく、何がどう決まり、どう支出されて、どのような効果があったという検証は、次世代がこれからの日本をどうデザインしていくかを考えていく具体的な基盤になる。今回のパリ五輪開会式を一つの契機に、東京五輪についても遡った検証を改めて、進めていくべきであろう。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
「少数派」石破政権はこれから、3つの難題に直面する 2024.11.19
自民大敗、でも石破続投......なら、次の政局はいつ、どんな形で訪れるのか? 2024.10.29
自民党と首相官邸を襲った「ローンオフェンダー」を軽視するな 2024.10.21
「石破首相」を生んだ自民党総裁選のダイナミズムと、「小泉失速」を招いた稚拙な広報戦略 2024.09.28
岸田首相のサプライズ退陣表明がサプライズでない理由 2024.08.14
パリ五輪のこの開会式を、なぜ東京は実現できなかったのか? 2024.07.28
石丸躍進の原動力「やわらかいSNSファンダム」を考える 2024.07.09