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菅政権の浮沈を左右する「40%の壁」とは?
全ては「政策コミュニケーションのデザイン力不足」
レポートは当初、日本で2回目接種率が40%を超える日は最短で9月9日と弾き出していた。ところが野村総研はその後、河野太郎担当大臣の号令の下で急速に進展しているように見えたワクチン接種の状況を踏まえて、予想を大幅に修正。2回接種を終える最短の日付を8月21日に前倒し修正した。7月3日に野村総研の梅屋真一郎制度戦略研究室長と面談した菅首相がその後の記者会見(8日)で「40%」という数値に言及。ワクチン接種率40%達成の基準を接種1回目に置くか2回目に置くかの違いは大きいが、菅首相は会見で「今月末に一度でも接種した人の数は全国民の4割に達する見通しだ」と述べ、政権のワクチン接種計画の中で「4割」という数値がにわかに重要性を帯びるものになっているのだ。
その意味で菅政権にとって、総合的な支持率(政権支持率+自民党支持率=修正青木率)という点でも、ワクチン接種率という点でも、「40%」という数値が一つの試金石になりつつあると言って良い。そっぽを見せつつある無党派層を菅政権が引き止められるか。ワクチン接種率40%を超えられるか、それとも総合的な支持率40ポイントを割って退陣を余儀なくされるか。果たして菅首相はこの40%という「壁」を超えることができるのであろうか。
ワクチン接種、酒類提供への干渉、五輪無観客開催だけでなく、4度に渡る緊急事態宣言も「後出し感」、「場当たり感」が否めない。いずれも共通するのは「なぜその政策をとり、それがどういう見通しに立ったものであるか」を国民に説明する点が不十分であるということだ。
それは、政策に関わるコミュニケーションを「デザイン」する力の脆弱性といえる。ワクチン供給網の整備が容易ではないこと、人流を減少させる必要があること自体は、丁寧に説明すれば理解してくれる国民はいる。しかし、同じ政策的な課題であっても、説明のやり方、説明する文脈、タイミングなどで受け止められ方は異なる。全体の構図を描いた上で戦略的に国民との対話を行うことが重要だ。菅政権にとって本質的に必要なのは政策コミュニケーションのデザイン力である。支持率を上げる典型的な方策は内閣改造だが、それが単に党内政局対策として閣僚・党役員の顔ぶれを変えるものに過ぎないのであれば、国民に見透かされることになろう。
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