コラム

スペイン、ポルトガル、南仏「大停電」の原因は「再エネへの移行」?サイバー攻撃めぐるデマも

2025年04月30日(水)16時56分
スペイン、ポルトガルの大規模停電の原因

大規模停電の最中にスペイン南部ロンダのショッピング街を歩く人々(4月28日) Jon Nazca-Reuters

<交通、航空、通信、病院、銀行など社会インフラが大混乱し、緊急事態も宣言された大停電の原因をめぐり、「ロシアや北朝鮮の攻撃」といった偽情報も飛び交う事態に>

[ロンドン発]4月28日昼、スペイン、ポルトガルと南仏の一部で大規模な停電が発生し、約6000万人が影響を受けた。イベリア半島全域で交通、航空、通信、病院、銀行など社会インフラが大混乱を引き起こし、スペインのペドロ・サンチェス首相は一時、緊急事態を宣言した。

数千人が地下鉄のトンネルに閉じ込められ、店舗は営業を停止、携帯電話や現金以外の支払い手段が使えなくなった。各家庭ではロウソクが灯され、ロウソク火災で56歳女性が死亡、13人が煙を吸って治療を受け、5人が病院に運ばれた。一酸化炭素中毒で家族3人が死亡した。

29日、サンチェス首相は「最も深刻な段階は過ぎた」と述べ、電力需要の99%以上が回復したと発表した。同日もスペインの一部地域では依然として電力供給が途絶え、鉄道も完全には再開されなかった。

オンライン上で偽・誤情報が駆け巡る

調査は事故と無関係な欧州送電システム事業者ネットワーク(ENTSO-E)加盟国の事業者が主導して中立性を確保する。スペイン、ポルトガル、フランスの事業者やENTSO-Eがパネルに参加して調査報告書を6カ月以内に提出する。

オンライン上では偽・誤情報が駆け巡った。主要メディアまで振り回され、混乱に拍車をかけた。サンチェス首相は「危機は偽情報やデマの絶好の温床になる」として信頼できないソースからの情報を拡散しないよう国民に呼びかけた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期速報値は0.3%減 関税前の駆

ワールド

米ADP民間雇用、4月6.2万人増に鈍化 予想下回

ワールド

中国経済、国際環境の変化への適応が必要=習主席

ワールド

独メルツ政権5月発足へ、社民党が連立承認 財務相に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story