コラム

なぜマクドナルドはウクライナ人の心を鷲掴みにする? 営業再開店には、空襲警報が鳴り響く日にも長蛇の列

2023年06月02日(金)17時28分
ウクライナのマクドナルド店舗

営業再開したマクドナルドに行列をつくるウクライナ市民(6月1日、筆者撮影)

<マクドナルドは「黄金のM型アーチ理論」のように平和と繁栄の象徴となったが、近年はその状況も変わりつつある>

[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]6月1日、筆者が長期滞在するクリヴィー・リフでも、米ハンバーガーチェーン大手マクドナルドの店舗が昨年2月のロシア軍侵攻以来15カ月ぶりに再開した。ウクライナ24都市109店舗を営業停止にしたマクドナルドは昨年9月にキーウの3店舗で宅配サービスを再開した。現時点で開店しているのは89店舗にのぼる。

昨年5月からウクライナで米陸軍仕込みの戦闘外傷救護を指導している元米陸軍兵士マーク・ロペスさんはこの日朝、マクドナルドのクリヴィー・リフ店でスタッフと一緒に自撮りした笑顔の写真をテレグラムで送ってきた。同店すぐそばのアパートメントに滞在する筆者はすっかり出し抜かれてしまった格好だ。

230602kmr_uam02.jpg

マクドナルドを「教会」と呼ぶロペスさん(本人提供)

マクドナルドを「教会」と呼ぶロペスさんはつい先日、一緒にドニプロに旅行した時もマクドナルドに飛び込んでハンバーガーとチキンナゲットにかぶりついていた。昨年6月に筆者がクリヴィー・リフを訪れた時からロペスさんはマクドナルドの再開を今か今かと待ち構えていた。遅ればせながら筆者が昼過ぎに店舗をのぞくと長い行列ができていた。

しばらくするとマクドナルドのユニフォームを着た一団が店舗に向かって行進してきた。まるで軍隊のように統率が取れている。午前と午後に分けてオープンするのかと思って待っていると、その一団は再び店舗から出てきて、すぐ前のロータリー下にある地下街へと消えていった。それを見て、ようやく空襲警報が鳴っているため避難していることが分かった。

230602kmr_uam03.jpg

空襲警報が鳴ったり解除されたりする度に店舗と地下街の間を往復するマクドナルドのスタッフ(6月1日、筆者撮影)

「ハンバーガーとナゲットが食べたい」

プレスリリースによると「空襲警報が出た場合、強化されたセキュリティ規則に従い、すべてのプロセスを迅速に完了し、支払い済みのセットを渡して店を閉め、従業員とお客様が避難所に行けるようにする。営業開始当初は混雑を避けるため、チームが最新のセキュリティ手順を実践するため、需要が増加した場合には限られた数のお客様をお迎えする」という。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ

ワールド

南ア中銀、0.25%利下げ決定 世界経済厳しく見通

ワールド

米、ICCのイスラエル首相らへの逮捕状を「根本的に

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、11月はマイナス13.7
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story