コラム

「また会いましょう」の言葉で人々を勇気づけたエリザベス女王との別れの涙

2022年09月20日(火)17時58分
エリザベス女王葬列

沿道でエリザベス女王の葬送行進を見送る市民(9月19日、ザ・マルで筆者撮影)

<英国民2000万人と会い、2万回以上の公務をこなし、地球を40周した偉大過ぎる女王の足跡。それだけに王室の未来には暗い影が差す>

[ロンドン発]在位70年、96歳で9月8日亡くなられたエリザベス英女王の国葬が19日午前11時(日本時間同日午後7時)からロンドンのウェストミンスター寺院で行われ、天皇皇后両陛下、ジョー・バイデン米大統領をはじめ国内外の要人、王族ら約2000人が参列した。沿道には200万人以上の市民が詰めかけ、世界の41億人が国葬を視聴した(推定)。

220920kmr_elf02.JPG

大英帝国王冠、宝玉と勺杖が載せられた女王の棺(木村史子撮影)

賛美歌と国歌、軍葬ラッパ、時代絵巻のように延々と続く葬送行進。エリザベス女王の葬送は想像していた以上に桁外れだった。女王の棺はロンドン郊外の居城ウィンザー城まで運ばれ、聖ジョージ礼拝堂に長年連れ添った夫フリップ殿下、先の国王だった父ジョージ6世、母エリザベス王太后、妹マーガレット王女とともに安置された。

筆者は、スコットランドのバルモラル城からバッキンガム宮殿に戻られたチャールズ国王とカミラ王妃(9日)、バッキンガム宮殿からウェストミンスター・ホールまでの葬送行進と弔問(14日)、チャールズ国王とウィリアム皇太子のロンドン・ランベス警察署訪問(17日)を間近で取材した。

妻の史子は18日午前3時から12時間半(最長24時間待ち)並んで一般弔問した。夜のロンドンは最低で摂氏8度まで冷え込む。日本円にして2800円程度の毛布が無償で支給された。19日の国葬当日は午前3時半すぎにバッキンガム宮殿につながる大通り、ザ・マルに到着したが、すでに4重、5重の人並みができ、最前列の人は毛布にくるまりゴロ寝していた。

220920kmr_elf03.JPG

ザ・マルの沿道で場所取りをする市民(筆者撮影)

「現代英国の礎」を失った不安

女王の棺を覆う「ロイヤル・スタンダード(紋章旗)」、その上に置かれた2868個のダイヤモンドを散りばめた大英帝国王冠、宝玉と勺杖(しゃくじょう)。英王室の「三種の神器」だ。ウェストミンスター・ホールからウェストミンスター寺院、バッキンガム宮殿へと、棺を乗せた砲車が英海軍の水兵98人に曳かれる光景は壮観でもあり、物悲しくもあった。

220920kmr_elf04.JPG

棺の後に続くチャールズ国王とウィリアム皇太子、ヘンリー公爵(木村史子撮影)

筆者はウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃、ヘンリー公爵とメーガン夫人の結婚、ジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子の誕生を取材したが、それとは比較できない人出だった。在位70年で2万1000回の公務をこなし、英国民の10人に3人、2000万人超が女王に直接会ったか見た(世論調査会社ユーガブ)というだけに、悲しみも深く、大きかった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story