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プーチンに戦争を決断させた「原油価格のロジック」と、その酷すぎる「計算違い」
ウクライナ侵攻によって地球温暖化対策が後退するかについては「欧州の炭素先物市場は昨年、二酸化炭素(CO2)1トン当たり100ユーロ(約1万3160円)に近づいたが、一時60ユーロ(約7895円)を割り込んだ。多くのヘッジファンドやロシア企業が撤退し、炭素価格は下がってきている」と指摘する。
炭素価格は通常、エネルギー価格と連動しているが、プーチン氏の戦争で連動しなくなった。炭素価格が下がれば、温暖化対策の取り組みは遅れる。ウクライナ侵攻でインフレが悪化し、脱炭素化に向けた動きはスローダウンせざるを得ないだろう。
プーチン氏にはウクライナに全面侵攻しても同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領が降伏して親露派の傀儡政権を樹立すれば、米欧の経済制裁はブーメラン効果を避けるため短期間で終わるという読みがあったのだろう。それこそ取らぬ狸の皮算用に終わった。
ウクライナとロシアの戦争が泥沼化すればエネルギー価格やインフレへの影響は制御不能になる恐れがある。米海軍大学校ロシア海事研究所のエミリー・ホランド准教授は「私たちは前例のないエネルギーショックの中にいる。1973年の第一次石油危機は中近東の産油国が石油価格の大幅な引き上げ、生産削減、輸出制限を行った」と言う。
「それに比べ、今回は原油、天然ガス、石炭、金属の価格、電気代が一斉に高騰している。石油危機より世界経済に与える影響は大きく、悪くなるだろう」。今回の侵攻はすでに8年が経過したウクライナ東部の紛争と同様、泥沼化する恐れがある。われわれは1世紀前と同じ不吉なスパイラルに入り始めている。