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中国警戒という「隙」だけではない、米NATOがこれほど「無力」になった理由
ロシアに天然ガス輸入を100%頼るオーストリアやフィンランドはロシアによって中立を強制されている。強制ではないものの伝統的に中立政策をとるスウェーデンも含め、ロシアの軍事力を恐れるこうした国々は「慮る」外交を維持してきた。これとは別にクリミア併合や東部紛争を経てもプーチン氏を「宥める」政策をとってきたのがドイツやフランスだ。
ロシアにとって重要な貿易相手国ドイツのオラフ・ショルツ首相は当初、バルト海経由でロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認見送りや、国際送金システムSWIFTからロシアの金融機関を排除することには慎重だったが、ウクライナ侵攻で一致団結して前例のない厳しい対露制裁を発動した。
最近、首相がキエフを訪れたポーランドやチェコ、スロベニアのほか、バルト三国はソ連支配の記憶が生々しい。元ソ連スパイの暗殺が続き、市民が巻き添えで死んだイギリスや、ウクライナ上空で航空機が撃墜された事件で多くの犠牲者を出したオランダもロシアに対する見方は厳しい。
「懇ろになる」「慮る」「宥める」対ロシア外交がプーチン氏を増長させ、ロシア軍増強の資金源となってきた。ロンドンの金融街シティにもロシアのオイルマネーが大量に流れ込み、不正蓄財の温床になっていると昔から批判されてきた。
「バイデン・ドクトリン」が共産主義を封じ込めた「トルーマン・ドクトリン」のようにロシアと中国の権威主義を封じ込めることを意図しているのかどうかはしばらく状況を見てみないと分からないが、世界が大きな転換点に立たされていることだけは間違いない。