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トランプ関税で中銀が金保有強化、ドル離れ鮮明に

2025年04月04日(金)13時41分

トランプ米大統領の輸入関税強化による世界経済へのリスクなどを背景に、世界の中央銀行が外貨準備高に占める米ドルの割合を低下させる一環で金を購入し、価格上昇を支えるとの見方が強まっている。写真は2023年9月、ロシアのシベリア地域ノヴォシビルスクで撮影。(2025年 ロイター/Alexander Manzyuk)

[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領の輸入関税強化による世界経済へのリスクなどを背景に、世界の中央銀行が外貨準備高に占める米ドルの割合を低下させる一環で金を購入し、価格上昇を支えるとの見方が強まっている。

ロシアによる2022年のウクライナ侵攻は、中銀による金購入の大きなきっかけとなった。それ以降に年間1000トンを超える金を購入しており、10年代の年間平均の約2倍で推移している。

3日の取引で金スポット価格は1オンス=3167.57ドルと過去最高値を更新した。25年に入ってから19%上昇し、22年末と比べると71%上がった。

産金業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の推計によると、トランプ氏が米大統領選で勝利した24年第4・四半期に中銀の金購入量は前年同期比54%増の333トンに膨らんだ。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)のコモディティー(商品)ストラテジスト、マイケル・ウィドマー氏は「新興国の中銀は現在、資産の約10%を金で保有している。本当は資産の30%を金で保有すべきだ」と指摘。そのためには中銀の金保有を1万1000トン増やす必要があるとした上で、米経済政策の不確実性は今後数年間続くとして「中銀の観点からは、(不確実性は)国債をポートフォリオに加える動機を弱め、実際にドル離れを進める動機を強めることを意味する」と言及した。

米国債と、購入のために必要となるドルは、これまでは安全資産の地位を金と争ってきた。

しかしながら、トランプ氏が打ち出した関税政策と世界的な貿易戦争、ウクライナでの戦闘へのアプローチ、数十年来にわたる欧州との同盟関係の軽視と懐疑は世界秩序を根底から覆した。

中銀への金売却に携わっている情報筋は「金の保有量が(少ない)中銀は、さらに金を増やそうとするだろう」とし、「今年の中銀からの需要は過去数十年間で最高になるかもしれない」と言及した。

企業が利幅を守るために米国の輸入関税の増加分を消費者に転嫁することや、労働者の賃上げ要求によってインフレ圧力が急上昇するとの懸念も、金が価値と富を蓄える役割を後押ししている。

マッコーリーのアナリストらは最近の顧客向けのメモで「今日までの金価格の強さと、それが今後も続くとの私たちの予想は、主に投資家や公的機関が信用リスクや、取引相手の信用リスクの対策として金を購入する意欲が高まっていることに起因している」とコメントした。

金の需要部門別で中銀は首位の宝飾品部門、投資部門に次いで3番目となっており、世界の消費量の23%を占めている。通常ならば中銀は価格に敏感で、価格が下落すると購入し、価格が上昇すると購入を抑える。

アナリストらは金価格が着実に上昇するとの見通しの中で、中銀が金の購入を先延ばしする可能性は低いとしている。

一方、トランプ氏はドル離れを積極的に進めているとみられる国々に関税をかけると脅しているため、中銀は購入量を公表しない方法を選ぶかもしれない。

国際通貨基金(IMF)に報告された中銀による24年の金の総需要量は、WGC推計の34%しか反映されていない。

WGCによると、中銀は今年1―2月に金保有を正味44トン増やしており、国別ではポーランドと中国が最大となった。

ロイター
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