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中国警戒という「隙」だけではない、米NATOがこれほど「無力」になった理由
NATOは今ロシアとその同盟国ベラルーシに面するポーランドやバルト三国に計5千人を常駐させ、4万人の即応部隊を擁するが、それでもウクライナ侵攻を抑止できなかった。ボリス・ジョンソン英首相もバイデン氏と同様「いかなる状況でもウクライナで英軍がロシア軍と戦うことはない」と明言し、プーチン氏の冒険主義にお墨付きを与える形となった。
中立国で高まるNATO加盟論議
NATOに加盟していなければウクライナのようにプーチン氏の餌食になる恐れがある。ロシアを刺激するのを恐れてこれまで「フィンランド化」と皮肉られる中立政策を維持してきたフィンランドでもNATO加盟に賛成する世論が2017年時点の19%から53%に跳ね上がった。同国は中立を破り、ウクライナに対戦車兵器やアサルトライフル、弾丸を供与した。
1814年以来戦争をしたことがなく「軍事同盟に参加しない」ことを外交の伝統にしてきたスウェーデンでもNATO加盟に賛成する声が1月の42%から51%に急上昇した。同国はウクライナに対戦車ミサイル5千基を供与した。スウェーデンが他国に武器を供与するのはソ連がフィンランドに侵攻した1939年の冬戦争でフィンランドを支援して以来、初めてのことだ。
フィンランドは憲法で徴兵制を定めており、スウェーデンは2010年にいったん徴兵制を中止したものの、ロシアの脅威に対抗するため17年に再開した。フィンランドは国防予算の増額は「不可避」との立場を表明した。スウェーデンも国防予算を倍増して、できる限り早く国内総生産(GDP)の2%まで引き上げる方針だ。
フィンランドやスウェーデンは、ウクライナやジョージア(旧グルジア)と同じNATOのパートナー国だ。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は「われわれは集団防衛と抑止力を長期的にリセットしなければならない」とNATO加盟国は最低でも国防費にGDPの2%を充てる必要があることを改めて強調した。
ロシアとの付き合い方
ロシアのような核弾頭を6千発以上も保有する権威主義国家と付き合う方法の一つは、ゲアハルト・シュレーダー元独首相、フィンランドのパーヴォ・リッポネン元首相、イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相、極右のリーダーのように「懇ろ」になることだ。NATOと欧州連合(EU)の加盟国であるハンガリーのオルバン・ビクトル首相もこの口だ。
こうした国や人々は、ロシアから天然ガス・原油、鉱物資源を輸入する見返りに、自動車や自動車部品、機械、医薬品を輸出できれば良いという「毒を食らわば皿まで」の実利派。ギリシャやキプロスのように正教つながりからロシアマネーにどっぷりとつかり、「ロシアのトロイの木馬」と呼ばれている国もある。