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密航拠点の難民キャンプ「ジャングル」を撤去しても根本問題は解決しない
閉鎖された仏カレーの難民キャンプからよそへ移送される難民たち Pascal Rossignol-REUTERS
<イギリスに渡る希望を胸に押し寄せた難民数千人が身を寄せ、時にはイギリス行きのトラックや高速鉄道に飛び乗ろうとしたフランス側の国境の町カレーの難民キャンプが撤去された。フランスもイギリスも受け入れたがらなかった難民たちは、とりあえずフランス各地の宿泊施設に移送されるが、その先の見通しはまったく立たない>
英タブロイド紙が「ドーバー海峡を越えて難民が押し寄せる」と執拗にネガティブキャンペーンを繰り返してきたフランス北部の港湾都市カレーにある難民キャンプが撤去された。10月24日から3日間にわたった難民移送と撤去作業は、テントに火が放たれて黒煙が上がったものの、想像していた以上に穏やかに進められた。
地元当局は難民計4404人をフランス各地450カ所にある宿泊施設に移すとともに、孤児1200人を近くの施設に保護した。民間支援団体は孤児約100人が取り残されていると指摘しているが、催涙弾や放水銃が使用されることもなく、警官隊と難民が衝突する場面もなかった。
ジャングルと呼ばれる難民キャンプ
テントに火が放たれたのは難民の間に伝わる習わしだという。フランスのオランド大統領も強硬策が難民とホスト国の間にくさびを打ち込みたいテロリストを喜ばせるだけだということを学び、賢明なソフトアプローチに転換したようだ。
EUの難民1次申請者 Masato Kimura 作成
シリア内戦の激化で未曾有の難民が欧州に押し寄せ、昨年8月から1年間に、ドイツの67万8005人を筆頭にスウェーデンでは13万6580人が、フランスでも7万7605人が難民認定の1次申請を行った。「ジャングル」と呼ばれるカレーのキャンプには隙あらば、英国への密入国を試みる難民が滞留している。
今年8月、そのジャングルを訪れた。野営テントが文字通り、ジャングルのように密集している。衛生状態も良くなく、すえた臭いが漂う。今年になって6千人から4500人に減っていた難民の数が一気に1万人近くまで激増した。
仏カレーの難民キャンプ「ジャングル」 Masato Kimura
イギリス行きの甘い期待
英国が欧州連合(EU)から離脱すれば、海峡を渡る前に仏カレー側で行っていた国境管理の手続きは英国ドーバー側に移される――と、EU残留派のキャメロン首相(当時)が国民投票のキャンペーンで散々、脅しの手口に使ったことが背景にある。
03年に英仏間で結ばれたル・テュケ条約に基づき、難民はこれまでカレー側に留め置かれていた。しかしフランスが条約を撤回すればとにかく英国側に渡れるという噂が一気に広がった。ジャングルの入り口には警官隊がバスを止め、監視に立っていた。
高速道路のすぐそばにあった南半分の掘っ立て小屋やテントは今年2月以降、強制撤去され、難民の多くは新設された白いコンテナ宿泊施設に移された。コンテナ宿泊施設の区画に入るには出入り口の指紋認証システムを通らなければならない。過激派組織ISなどがジャングルに潜入するのを防ぐためだ。
撤去される前のジャングル Masato Kimura