少子化が深刻な韓国で育児休業パパが急増している理由
日本と同じく少子化が深刻な韓国で男性の育休取得率が上がっている kazuma seki-iStock.
<育児休業に入る父親に十分な給付が支払われる仕組みが功を奏した>
厚生労働省が6月に発表した2021年の日本の合計特殊出生率は1.30で、2020年の1.34を下回った。一方、隣国韓国の2021年の出生率は0.81(暫定値)で2020年の0.84を下回ると予想されている。出生率の低下は日本より韓国が深刻であることが分かる。
このように出生率の低下が続いている中で韓国では男性の育児休業取得率が増加している。2002年に男性の育児休業取得者数は78人で、取得割合は対象者のわずか2.1%に過ぎなかったが、2021年には29,041人となり、取得割合も26.3%まで上昇した(2022年第1四半期に育児休業を取得した男性は7,993人で前年同期比25.6%増加)。なぜ、最近韓国では多くの男性が育児休業を取得しているのだろうか。
男女別育児休業取得者と全育児休業取得者のうち男性が占める割合
出所)雇用労働部(雇用保険DB資料)から筆者作成
韓国で男性の育児休業取得者が増えた理由としては、女性の労働市場参加の増加や育児に対する男性の意識変化等の要因もあるものの、最も大きな要因として同じ子どもを対象に2度目の育児休業取得を促す「パパ育児休業ボーナス制度」の施行が挙げられる。
「育児休業給付金」の特例制度である、いわゆる「パパ育児休業ボーナス制度」は、男性の育児休業取得を奨励し、少子化問題を改善するために2014年10月に導入された(実際には2回目は父親が取得することが多いので、通称「パパ育児休業ボーナス制度」と呼ばれている)。
同制度は、同じ子どもを対象に2回目に育児休業を取得する親(90%は男性)に、最初の3カ月間について育児休業給付金として通常賃金の100%を政府が支給する制度だ(韓国における通常賃金は、基本給と各種手当で構成されており、変動性の賃金(手当)は除外される。通常賃金は、時間外・休日労働手当や退職金を計算するための基準となる。)。
更に「パパ育児休業ボーナス制度」では、最初の3カ月間の支給上限額は1カ月250 万ウォン(263,250円、6月28日の為替レート1円=0.1053ウォンを適用、以下同一)に設定されており、それは1回目に育児休業を取得する際に支給される育児休業給付金の上限額(1カ月150万ウォン(157,950円))よりも高い。
このように、育児休業を取得しても高い給与が支払われるので、中小企業で働いている子育て男性労働者を中心に「パパ育児休業ボーナス制度」を利用して育児休業を取得した人が増加したと考えられる。実際、2020年における育児休業取得者数の対前年比増加率は、従業員数30人以上100人未満企業が13.1%で最も高い(従業員数10人以上30人未満企業は8.5%、従業員数300人以上企業は3.5%)。
2022年からは「パパ育児休業ボーナス制度」が改正され、適用対象が既存の全ての子供から、産まれてから12カ月以降の子供に変更され、父母が順次的に(必ず母親と父親の取得期間がつながる必要はない)育児休業を取得した際に適用される。適用対象を変更した理由は、2022年から育児休業制度の特例として「3+3親育児休業制度」が施行されるからである。
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