コラム

新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす世代間の対立と宗教間の対立激化

2021年12月11日(土)19時52分

このような状況の中で新型コロナウイルスが発生し、若者と高齢者それぞれが原因で集団感染が起きたことにより、両者の間の対立が激しくなっている。先に集団感染の原因となったのは若者である。彼らは密閉された居酒屋やクラブ等に出入りし、酒を飲んだり、踊ったりするようになった。マスクを着用せず、社会的な距離を確保しなかった結果、2020年5月6日に梨泰院のクラブ等で集団感染が発生し、感染が広がった。

梨泰院の集団感染が発生してから3ヶ月が過ぎた時点で今度は高齢者の間で集団感染が発生した。高齢者が多く参加する複数の保守系団体は、2020年8月15日にソウルの光化門広場で文在寅大統領の退陣を要求する集会に参加した。人と人の間の距離は近く飛沫感染のリスクが高かったものの、数万人の参加者は声を高め、文在寅政権を批判した。その結果、感染は全国に広がり始めた。

感染防止策も守らない宗教右派も

高齢者は若者を「生意気だ」と非難する半面、若者は高齢者を「コンデ」と呼んで非難し始めた。コンデに相当する日本語はよく分からないが、あえて訳すと「老害+くそじじ(くそばば)」の意味に近いのではないかと考えられる。

新型コロナウイルスの感染拡大により、宗教間の対立も広がろうとしている。韓国における最初の感染拡大は、新興宗教団体「新天地イエス教」が原因であった。つまり、韓国における31人目の感染者(当時61歳、女性)が韓国の南東部の大邱広域市にある新興宗教団体「新天地イエス教」の「新天地イエス教大邱教会」を訪ねてから感染が広がった。

そして、上述した通り、2020年8月15日には保守系のプロテスタント教会「サラン第一教会」を中心に感染が広がった。「サラン第一教会」は、教会を率いるチョン・グァンフン牧師が文政権に反対する等強烈な政治活動をしており、「保守系の極右教会」というレッテルが貼られている教会である。「サラン第一教会」の信徒の多くは、政府の防疫対策を守らず、文在寅大統領の退陣を要求する集会に参加し、政府からの検査要求にも応じなかった。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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