韓国で不動産価格が高騰し続ける理由
また、総合不動産税改正案では、3戸以上または調整対象地域に2戸の住宅を所有する人に対し、課税標準区間別に税率を現行の0.6~3.2%から1.2~6.0%に大きく引き上げた。住宅に対する総合不動産税は課税対象額(課税標準)に税率をかけて算出する。韓国政府は、不動産関連税率を引き上げると、多住宅保有者が税金に対する負担増加を回避するために住宅を市場に手放すことを期待した。しかしながら、韓国政府の期待とは異なり、所有者はいつか政権が変わると不動産政策も変わり、税の負担が軽くなると共に不動産価格も上昇すると考え、市場に不動産を手放す人は少なかった。
さらに、「住宅賃貸借保護法」いわゆる「賃貸借3法」(伝貰・月貰申告制、伝貰・月貰※上限制※、契約更新請求権制)のうち、「伝貰・月貰上限制」と「契約更新請求権制※」が施行されてから、伝貰物件が急激に減り、伝貰価格が跳ね上がる「伝貰大乱」が起きた。韓国不動産院の全国住宅価格動向調査によると、ソウル市のマンションの伝貰受給指数は2020年7月の117.5から2020年12月には133.5に上昇した。ソウル市の伝貰受給指数133.5は統計を発表してから最も高い数値である(2021年2月のソウル市の伝貰受給指数は126.3)。
※契約更新請求権とは2年の契約期間終了後、賃借人が希望する場合1回に限って2年間の契約更新を請求することができる権利である。家主は、住宅に家主やその直系尊属・卑属が実際に住む場合を除いて契約更新請求を拒否することができない。
※月貰:毎月決められた額の家賃を払う制度
※伝貰・月貰上限制:家主と賃借人が再契約をするときに、賃貸料の値上げ幅を、従来の賃貸料の5%以内に制限する制度
上述した内容以外にも低金利が長期間続いたこと(韓国銀行の政策金利は0.5%)、市中に供給された通貨量が増加したこと、民間を中心とした再建築や再開発が継続的に規制されていたこと、不動産貸出を規制したこと等が不動産価格を上昇させた原因として考えられる。
文在寅大統領は1月18日に開かれた新年記者会見で「今まで不動産投機を防ぐための対策を主に実施したものの、不動産の安定化は成功できなかった」と不動産政策の失敗を事実上認めた。そして、2月4日には公共部門を中心に住宅建設を大幅に加速し、2025年までにソウルに32万戸、ソウル以外の地域に51万戸の住宅を建設すると発表した(2・4対策)。
文政権が次々と不動産対策を発表しても、今後不動産価格が安定し、マンションの供給が増えると予想する人は多くないだろう。その理由は文政権に代わって以来、住宅建設の認可件数が大きく減少したからである。今から認可件数を増やしても供給量は増えず、実際に供給量が増えるのは早くてもこれから3~4年後である。また、本文でも言及したようにソウルを含めた首都圏中心の経済が改善されない限り、ソウルやその付近の不動産価格の上昇を防ぐことは難しい。さらに、今後も一人世帯が増加すると予想されており、住宅に対する需要はしばらくの間は減らないと予想される。
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