コラム

韓国で不動産価格が高騰し続ける理由

2021年03月29日(月)08時57分
ソウルで建設中の大規模マンション

ソウルで建設中の大規模マンション(2020年10月) Kim Hong-Ji-REUTERS

<文在寅の支持率が就任以来最低に下落した背景には不動産価格の高騰があると言われる。コロナ禍で景気も悪いのになぜこうなったのか>

韓国ではこのところ、韓国政府の強力な不動産規制政策とコロナ禍による景気の不確実さにもかかわらず、不動産価格が高騰を続けている。さらに、最近は宅地開発などを手がける公共機関である韓国土地住宅公社(LH)の職員らが、2018年〜2020年の間にソウル郊外の住宅開発対象に指定された地域の土地を発表前に不正に購入していた疑惑が発生。文在寅大統領の支持率は3月3週目には34.1%まで低下した。2017年5月の文政権発足以来、最も低い支持率だ。なぜ韓国では不動産価格が高騰し、政権の支持率にまで影響を与えているだろうか。

■文在寅大統領の支持率
KIMCHART1.jpg
出所)韓国リアルメータのホームページより筆者作成

現在の状況

韓国不動産院(旧韓国鑑定院)が3月11日に発表した月刊住宅価格動向によると、2021年2月の全国の住宅価格は1カ月前に比べて、 0.89%上昇した。また、2021年2月の不動産価格指数(住宅)は、108.1(2017年11月=100)で、地域別には韓国の行政首都ともいわれている「世宗特別自治市」の指数が 141.2で最も高く、次いで大田市(128.0)、京畿道(114.1)、大邱市(114.0)、ソウル市(112.1)、仁川市(110.2)の順で上昇幅が高かった。

■地域別不動産価格指数(住宅):2017年11月=100
KIMCHART2.jpg
出所)韓国不動産院のホームページ「月刊住宅価格動向」から筆者作成

このように、不動産価格指数(住宅)だけをみると、ソウル市や首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)のアパート(日本のマンションに当たる。以下、マンション)価格は大きく上昇してはいないように見える。それでは、なぜマスコミはソウル市や首都圏のマンション価格が大きく上昇していると騒いでいるのだろうか。

韓国の国土交通部は、文政権に代わってからソウル市のマンション価格は14%上昇したと発表した。しかしながら韓国不動産院のホームページに公開されている共同住宅実取引価格指数をみると、ソウル市のマンションの売買実取引価格指数(2017年11月=100)は、文政権が誕生した2017年5月の95.4から2021年1月には149.1となっており、約1.56倍上昇している。

市民団体の経済定義実践市民連合は10月16日、文政権が発表している公示地価は実際の取引価格の35%水準の金額しか反映していないと指摘する報告書を公表した。この数値は、李明博政府の44%、朴槿恵政府の43%よりも低い水準だ。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story