高年齢層の雇用拡大は新卒採用にどう影響するか?
人手不足解消と社会保障の担い手を増やす目的で推進されている高年齢者雇用 stockstudioX-iStock
<70歳までの定年延長など高年齢層の雇用を促進する政策と、若年層の雇用維持を両立するには>
政府が70歳雇用を推進
1970年代までには55歳が一般的だった日本の定年年齢は、平均寿命の上昇や出生数の減少による労働力不足等の影響によって、継続的に引き上げられてきた。政府は高年齢者雇用安定法を改正することで、1985年に60歳定年を努力義務とし、1994年には法を改正して60歳定年を義務化する規定を設け、1998年からは60歳定年を施行した。その後、2006年には高年齢者雇用安定法を改正して65歳までの継続雇用を義務化する規定を設け、2013年から施行している。
さらに、今年の3月31日には希望する人が70歳まで働けるよう、企業に就業機会確保の努力義務を課すことを柱とした高年齢者雇用安定法の改正案が、参院本会議で自民党などの賛成多数により可決、成立した。改正案は、健康な高齢者の働き手を増やし、人手不足に対応するとともに、年金などの社会保障の担い手を厚くすることを目的としており、2021年4月から施行されることになっている。
現行法では、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、(1)定年制の廃止、(2)65歳までの定年の引き上げ、(3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度)の導入のうち、いずれかの措置を実施することを義務化している。
今回の改正案では、(2)や(3)の年齢を70歳までに引き上げた。さらに、企業が上記の三つの選択肢に加えて、社外でも就労機会が得られるように、(4)他企業への再雇用支援、(5)フリーランスで働くための資金提供、(6)起業支援、(7)NPO活動などへの資金提供という四つの項目を追加した。
高年齢者と新卒者の雇用の現状
政府の高年齢者雇用推進政策により、労働市場に参加する高年齢者は年々増加している。60~64歳と65歳以上の就業率は、高年齢者雇用安定法が改正された2006年の52.6%(397万人)と19.4%(395万人)から2019年には70.3%(508万人)と24.9%(784万人)まで上昇しました。60歳以上の就業者数は13年間で500万人近く増加したことが分かる。
一方、20~24歳と25~29歳の就業率は2006年の64.2%(472万人)と80.0%(656万人)から2019年には72.4%(457万人)と86.7%(533万人)まで上昇しているが、就業者数は絶対数の減少により13年間で1,128万人から990万人と138万人も減少した。
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