コラム

韓国に経済危機は再来するか?

2019年12月31日(火)00時22分

経済成長率が公式的に集計された1954年以降、年間経済成長率(実質)が2%を下回ったのは、凶作があった1956年(0.6%)、第2次オイルショックがあった1980年(-1.6%)、アジア経済危機があった1998年(-5.1%)、リーマンショックがあった2009年(0.8%)の4回のみで、2%を下回ることに対する韓国国内での心理的不安感は大きいと言える。

■実質経済成長率(対前四半期比)の推移

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■実質経済成長率(対前年比)の推移

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「セルコリア」、「エクソダスコリア」?

一方、韓国株式市場において、外国人投資家の韓国株の売りが続いたことや、外国人投資家の韓国国内への投資が2018年に比べて大きく減少したことで、韓国のメディアでは「セルコリア」という見出しで、韓国からの資本の急速な引き上げと、韓国経済の危機を書き立てた。

外国人投資家の韓国株の売り越しは11月7日から12月5日まで、営業日基準で21日間続いた。この期間、外国人投資家の売り越し金額は5兆ウォンを超え、韓国総合株価指数も同期間に2,144から2,060まで3.92%下落した。このように外国人投資家の韓国株の売り越しが続いた主な理由としては、米中貿易摩擦が長期化している中で、アメリカが中国に対して12月15日に対中追加関税リストを予定していたことで中国への輸出依存度が高い韓国経済がさらに悪化すると予想されたこと(幸い、米国通商代表部(USTR)が12月13日に、米国と中国が貿易交渉で第1段階の合意に達したと発表したことにより、対中追加関税リストの発動は見送ることになった)、香港事態と関連した不安感が拡大したこと、米朝関係の悪化により韓国の地政学リスクが高まったことなどが挙げられる。

さらに、外国人直接投資の金額は2018年の269億ドルから2019年第3四半期現在135億ドルまで大きく減少している。第4四半期に大きな投資が行わなければ前年を大きく下回ることが確かである。ムーディーズが半導体、自動車、鉄鋼、通信、流通、石油精製、化学など主要業種の信用見通しを「否定的」と評価したことも外国人投資家の韓国への投資減少に影響を与えている。では、本当に「セルコリア」や「エクソダスコリア」が発生し、1997年のような経済危機は再来するだろうか?

■対韓外国人直接投資の推移

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注)2019年は、第3四半期までの合計額
出所)産業通商資源部「外国人直接投資統計」より筆者作成

韓国発の経済危機は起きるだろうか?

確かに、最近、韓国の経済状況を表す経済指標はよくない。従って、韓国政府が適切な景気対策を緻密に行わないと1997年の経済危機が再来する可能性は十分ある。但し、その可能性はマスコミで騒ぐほど高くはないだろう。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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