コラム

韓国に経済危機は再来するか?

2019年12月31日(火)00時22分

外資より韓国企業が韓国に投資しない状況を改善できなければ文在寅大統領の雇用創出政策は失敗する可能性が高い Chalinee Thirasupa-REUTERS

<韓国の経済成長は減速し、予想の2%をも下回りかねない岐路にある。韓国国籍を放棄する韓国人が増えるなど構造問題も深刻だ。だが再び1997年のような通過危機が起こる可能性はメディアが言うほど高くない>

最近、韓国経済が危ないというニュースがマスコミなどから流れている。一部のマスコミでは1997年のアジア経済危機が再来する可能性が高いとまで報道している。実際、韓国経済はどうなっているだろうか?

減少する輸出と伸びない経済成長率

マスコミが韓国経済の危機説を報道している主な理由は、昨今、韓国経済の現状を表す経済指標が悪くなったからである。まず、経済成長率の見通しが段々低下している。国際通貨基金(IMF)は、10月15日に発表した世界経済見通し(World Economic Outlook)で、今年の韓国の経済成長率の見通しを4月の2.6%から2.0%へと下方修正した。韓国銀行(中央銀行)も11月29日に、2019年の経済成長率見通しを2%と発表した。今年7月時点の前回予想の2.2%を下回る数値である。国際通貨基金(IMF) や韓国銀行などが経済成長率の見通しを下方修正した理由は、米中貿易戦争の長期化によるグロバール経済の鈍化、最大輸出相手国である中国の景気鈍化、半導体市況の回復の遅れなどにより、韓国のGDPの大きな割合を占めている輸出が減少したからである。実際、韓国の輸出額は昨年の12月から今年の11月まで12カ月連続で前年同月を下回っている。輸出が前年同月に比べて12カ月連続で減少したのは2015年1月から2016年7月まで19カ月連続以降初めてのことである。11月の輸出実績を品目別に見ると、半導体(-30.8%)、ディスプレイ(-23.4%)、二次電池(-17.7%)、繊維(-12.3%)、石油化学(-19.0%)、石油製品(-19.0%)、船舶(-62.1%)の減少が目立つ。特に、輸出金額の20%以上を占めている半導体の輸出金額の減少が韓国経済に打撃を与えている。

■韓国の輸出金額に占める品目別割合

koreakeizai20191231114501.jpg

輸出の減少は経済成長率にもマイナスの影響を与えている。2019年第1四半期の経済成長率は対前期比マイナス0.4%と、世界金融危機だった2008年第4四半期の経済成長率がマイナス3.3%になって以降、およそ10年ぶりの最低値を記録した。民間および政府の消費支出は増加したものの、輸出は半導体をはじめとする主力製品の不振が続いた結果減少した。また、第2四半期と第3四半期の経済成長率もそれぞれ1.0%と0.4%に止まっており、第4四半期の実績が大きく改善されないと年間経済成長率2%を達成することは難しい状況である(経済成長率はすべて実質)。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story