韓国に経済危機は再来するか?
取引日基準で21日間続いた外国人投資家の韓国株の売り越しは止まり、韓国総合株価指数も12月27日現在、2,204まで回復している。そして、外国人投資家の対韓投資金額の減少が懸念されていたものの、この点はより長期的な観点から見る必要がある。つまり、上記の「対韓外国人直接投資の推移」を見ると、2018年の対韓投資金額が群を抜いて多かったことが分かる。特に、フランスや中国における2018年の対韓投資金額が大きく増加した。
■主要国の対韓投資金額の四半期別推移
そして、経済危機があった1997年と比べると、韓国経済は大きく成長した。サムスン電子、LG、SK、現代自動車など韓国を代表する企業が現れた。1997年に89億ドルにすぎなかった外貨準備高は、2018年時点で4,037億ドルまで増加した。また、1997年の経済危機の大きな要因であった短期対外債務の対外貨準備高比も1997年の286%から2019年には28%まで低下しており、2019年第3四半期の失業率も3.3%まで改善(政府の財政投入拡大により公共事業の仕事が経ているものの)している。このような数値からは、確かに韓国経済は1997年に比べるとよくなっていると言える。
もっとも、油断はできないだろう。経済全般に関する構造改革を急がないと、経済危機に直面する可能性は高くなる。マスコミでは外国人投資家の韓国離れだけが報道されているが、実際には韓国企業や若者の韓国離れの方が深刻だ。韓国企業の韓国への投資金額の減少が強まる中で、韓国企業の海外への投資は増加傾向にある。このままだと韓国政府の雇用創出政策は失敗に終わる可能性が高い。
■韓国企業の海外への直接投資の推移
また、若者の多くが国籍を放棄している。韓国における国籍放棄者(国籍離脱者や国籍喪失者の合計)は2018年現在33,593人で、2017年の21,269人に比べて1万人以上も増加した。日本の2,262人(2018年)を大きく上回る数値である。日本に比べて韓国の国籍放棄者が多い理由としては、1)海外への留学生数が日本より多いこと(2017年基準、韓国:239,824人、日本:66,000人)、2)日本より労働市場が狭く、就職することが難しいこと、3)男性の場合、兵役の義務があることなどが考えられる。
世界的に貿易の伸びが低下し、過去のような爆発的な経済成長は期待できないのが現状である。今後は2%前後の経済成長が続くという見通しが多い。今後、韓国政府が国の富を増やし、国民の生活の質を高めるためにどのような経済対策を実施するのか注目したい。
この筆者のコラム
少子化が深刻な韓国で育児休業パパが急増している理由 2022.06.30
深刻化する韓国の貧困と所得格差 2022.06.02
韓国で1日あたりの新規感染者数が60万人を超えた理由 2022.03.29
【韓国大統領選】李在明と尹錫悦の経済政策、不動産政策、労働政策を比較する 2022.02.21
北京五輪が韓国与党の大ブレーキに?韓国大統領選まであと1カ月 2022.02.10
安哲秀氏との候補一本化に成功し、韓国の次期大統領になるのは誰か 2022.02.03
韓国大統領選、尹錫悦候補の支持率はなぜ再上昇できたのか 2022.01.27