加谷珪一が考える『ポスト新産業革命』

「人口減少」×「人工知能」が変える日本──新時代の見取り図「不動産・住宅関連業界編」

2018年03月26日(月)13時45分

写真はイメージです。 paprikaworks-iStock.

個人の権利、私有の概念、社会の倫理など、18世紀の産業革命は物質的豊かさをもたらし、人間の価値観を中世以前とはまるで異なるものに変えた。

そして、本格的な「人口減少」時代を迎えた今、「AI(人工知能)」による新しい産業革命が、再び人間の価値観を根本から変えようとしている。

「人口減少」と「人工知能(AI)」後の日本をテーマにした新刊『ポスト新産業革命 「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書』(CCCメディアハウス)を上梓する経済評論家の加谷珪一氏による特別寄稿(全4回:金融機関編/小売編/自動車産業編/不動産・住宅関連業界編)をお届けする。

新時代の見取り図「不動産・住宅関連業界編」

不動産ビジネスはよく知られているように人口動態との関係が密接である。今後、人口減少が本格化することで、不動産に関する常識が一変する可能性が出てきてた。これまで何度も提唱されながら実現しなかった、収益還元による不動産価格の算定である。

いよいよ日本人の土地神話は崩壊へ

土地神話という言葉に代表されるように、日本人は不動産に対して強い思い入れを持ってきた。だが、新しい時代においては、不動産に対する認識を根本的にあらためる必要が出てくるだろう。

これまで地価というものは、エリアごとに一律に決まってくるものという認識が強かった。一等地と呼ばれるところならどこでも地価は高く、そうではないエリアは安くなるという考え方である。

社会が単純で、ライフスタイルも画一的だった昭和の時代までは、こうした仕組みもうまく機能していたが、これからはそうはいかなくなる。

諸外国ではすでに一般的となっているが、不動産の価値は、その不動産が生み出す収益によって決まる。賃貸に出した場合にはいくらで貸すことができるのか、売却する場合にはどの程度、購入希望者がいるのか、他の用途に転用した場合には、どの程度の収益が見込めるのかがポイントとなる。同じようなエリアであっても、駅から遠く不便な物件は安くなり、駅近で利便性の高い物件は高い価格を維持することになる。

こうした動きの背景にあるのは人口減少に伴う都市部への移動である。

人口減少は今の状態のまま人の数が減るということを意味していない。人間は経済活動を行って生活しているので、ある程度、人口が集約していないと経済活動そのものが成り立たない。つまり、人口が減っていくと、それに伴って人の移動が起こり、都市部への人口集約が進んでしまうのだ。

すでに郊外ではその傾向が顕著だが、人が住まなくなっているエリアでは、いくら値段を下げても買い手がつかないケースが増えている。

これまでの時代なら、銀行の土地担保主義によって、流動性が低い物件でも、融資という形でお金が動いた。だが銀行経営にも合理化が求められており、従来のような土地を担保にした安易な融資は実施できない。銀行が担保という形で資金を供給できない場合、流動性の低い不動産は、仮に評価額が高くても、事実上、無価値となってしまう。土地さえ残っていれば何とかなるという概念は捨てた方がよい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB総裁ら、緩やかな利下げに前向き 「トランプ関

ビジネス

中国、保険会社に株式投資拡大を指示へ 株価支援策

ビジネス

不確実性高いがユーロ圏インフレは目標収束へ=スペイ

ビジネス

スイス中銀、必要ならマイナス金利や為替介入の用意=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 7
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story