年金財政は好転へ...将来は「年金増額」の可能性大な一方、やはり割を食う「あの世代」
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<5年に1度の公的年金「財政検証」の結果を見ると、年金財政は好転に向かっており年金制度が立ち行かなくなる可能性は限りなく低くなった>
政府は2024年7月3日、5年に1度実施する公的年金の財政検証結果を公表した。高齢者の就業が増えて保険料収入が増加したことや、年金減額制度(マクロ経済スライド)が本格的に導入されたことによって、年金財政は好転に向かっている。
現状レベルの経済状態が続いた場合でも、政府が目標としてきた所得代替率50%の維持が可能であることが明らかとなった。分かりやすく言うと、公的年金制度が立ち行かなくなる可能性は限りなく低くなったということであり、国民は制度の破綻について心配する必要はない。
だが、制度が維持できることと、私たち国民が十分な額の年金をもらえることは必ずしも一致しないので、この点については注意が必要である。年金給付額は毎年、少しずつ減額される見通しであり、多くの人が、高齢になってからも働かざるを得なくなるだろう。
日本の公的年金は賦課方式となっており、現役世代から徴収する保険料で高齢者の年金を賄う仕組みになっている。このため高齢者の割合が増加すると、年金額を維持するため、現役世代からより多くの保険料を徴収する必要に迫られる。
過去30年間は、現役世代の保険料負担を増やす(つまり収入を増やす)という形で対処してきたが、それも限界に達しており、政府が選択したのは、高齢者に給付する年金の額を減らす措置である。
約30年間は年金が減り続けて給付額2割減に
年金を減額する仕組みはマクロ経済スライドと呼ばれ、このところ政府は毎年、この制度を発動しており、年金額は毎年少しずつ減っている。減額制度の効果は大きく、年金財政は急速に改善に向かっており、前述のように、制度が立ち行かなくなる可能性は限りなく低くなった。
だがマクロ経済スライドが終了するまでの約30年間は、年金が減り続けるので、単純計算で考えると、今、40代、50代の人が年金をもらう頃には、現在の貨幣価値で2割ほど給付額が少なくなる。
かつて40代で400万円台の年収があったサラリーマンは、現在、月当たり約15万円の年金をもらえているが、今、40代で同程度の年収があっても、実際に年金をもらう頃には、これが12万円程度にまで減ってしまう。持ち家がある人は大丈夫だろうが、月12万円で賃貸生活はかなり厳しいと言わざるを得ない。
40代、50代が高齢者になる頃には、厳しい老後生活が待っている一方、現在、突出して高い人口割合を占める団塊世代の多くが鬼籍に入る。その後は人口構成が劇的に改善するので、30歳以下の若者が年金をもらう頃には、むしろ年金額は増えている可能性が高い。
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