日本でも世界でも、公共事業で整備された近代インフラは老朽化でもう限界
だから下水は、言ってみれば文明の華。日本でも下水、高速道路、ゴミ処理場その他のインフラは高度成長の産物だ。これらを建設する「公共事業」は、1970年代初期のピーク時に予算の30%をも占め、財政投融資でさらにカネを足されて地方経済、そして政治家の集票マシンを支えた。この「列島改造」で地方は見違えるほど豊か、小ぎれい、そして便利になったのだ。
改修のための国債増発はもう限界
しかし2000年代に入り、小泉政権が「聖域なき構造改革」を唱え、公共工事の予算にも大ナタを振るう。公共工事は予算の10%程度に減らされ(現在は5%ほど)、財政赤字の縮小に一役買った。だが、これで景気はいっそう悪くなり、地方都市の街並みも今ではシャッターだらけになった。
加えて、当時建設されたインフラが劣化してくる。20年時点で、全国に1万あるトンネルの4割、72万カ所ある橋の1割が早急の修繕を必要としていた。事態は待ったなし。12年には山梨県で高速道路のトンネルの天井板が崩落し9人もの死者を出した。アメリカでもハイウエーの橋が老朽化で崩落し死傷者が出る事例が起きている。
しかし、改修も簡単ではない。まず資金が足りない。日本のインフラ改修には、最低でも年間5兆円の資金が必要とされているが、国債増発はもう限界。フランスのヴェオリア・エンバイロメントなど、上下水道事業を民間企業が請け負う例もあるが、利益が出ない事業に民間企業は乗ってこない。90年代にカリフォルニア州は発電など電力事業を自由化したが、エンロンなど企業が投資を惜しみ、停電が頻発したため、01年に自由化を撤回した。
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