自称「大国ロシア」の没落が変える地政学──中国の見限りと寝返りが与える影響
ウクライナ軍に破壊されたロシアの戦車が草原に(今年8月) ALEX CHAN TSZ YUKーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES
<もともと経済力がないロシアの地位が沈んでも、世界に与える影響はほとんどない。むしろ重要なのは、この「帝国」崩壊後の東アジアと世界の勢力図が大きく変わること>
9月5日、ロシアの東端カムチャツカで若者の開く環境問題フォーラムに出席したウラジーミル・プーチン大統領は、「(日本ではなく)ロシアこそ日出ずる国」なのだと宣明した──。
そんな子供じみたことはどうでもいいが、ロシアのこれからはむしろ「日没する国」になるのであるまいか。
ウクライナ戦争で、ロシアの勝利は遠のく一方。中国も中央アジア諸国もロシアから距離を置く。プーチン大統領は、ウクライナを勢力下に止めようとして、かえってロシアの地位低下を速めている。
それでもロシアは外交巧者だ。将棋(ロシア人はチェスだが)をしているかのように、なけなしの持ち駒を総動員して局面打開を図る。
ウクライナ戦争が起きてからも、6月下旬には中国主宰のBRICS(新興5カ国)オンライン首脳会合にプーチンが参加。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が6月末にモスクワを訪問して秋に同国で開くG20首脳会議へのプーチンの参加を招請した。
セルゲイ・ラブロフ外相も7月初めにベトナム、同月末にはエチオピアなどアフリカ諸国を歴訪し、8月初めにはミャンマーの山奥の首都ネピドー訪問と、暑いさなか老骨にむち打ってロシアを世界にアピールする。
9月中旬にはウズベキスタンの古都サマルカンドでの上海協力機構(SCO)首脳会議にプーチンが出席。主人顔こそできなかったものの、「ロシアには友好国が多い。孤立しているのはG7、おまえたちのほうだ」というメッセージの発信に余念がない。
3月には国連総会で、ロシア軍のウクライナ侵攻を非難する決議が2回も上程され、いずれも140カ国以上の賛成を得て採択されはした。しかし、アメリカにいつレジームチェンジをされるか分からない国々は、アメリカの毒消しとしてロシアとの関係を大事にする。キューバ、イラン、ニカラグアなどの諸国は棄権に回った。
そして、インド、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、南アフリカ、ボリビアなど必ずしも親ロシアでない諸国でも、棄権する例が目立った。世界はロシア非難で沸き立っているわけではない。
だがロシアの打つ将棋は手が悪すぎる。アメリカを怖がる政権はロシアを当て馬としてくわえ込むが、アメリカが手を引いた地域でロシアはお呼びでない。
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