コラム

自称「大国ロシア」の没落が変える地政学──中国の見限りと寝返りが与える影響

2022年10月21日(金)16時37分

「日没後のロシア」はどうなる

つまり中国は、西側との関係を優先してロシアを見限ることも十分あり得るということだ。19世紀半ば、ロシアが清朝から奪ったウラジオストク周辺の広大な(日本の面積の4倍だ)沿海地方を返せとまでは言わないだろうが。

ロシアはここまで、武力でつくり上げた帝国を武力で維持しようとする「本性」を明らかにしてしまった以上、もう信用してもらえまい。さりとて、相手に文句なしの畏怖感を与えるほどの経済力、軍事力を身に付けることももうない。

戦争が一段落すれば、西側諸国はロシアへの投資を少しは再開するかもしれないが、ロシアは基本的には第1次大戦前後のオスマン帝国、あるいはオーストリア・ハンガリー帝国のように、日没のベクトルの中にある。

具体的にどういう形になるか、特に日本に面する極東がどのようになるのかは興味のあるところである。1920年に独立した極東共和国のような存在ができるのか、19世紀半ばまで清朝の勢力圏だったこの地域を中国に要求されるのか、単に困窮するのか、さまざまのバリアント(変種)がある。

一方、国連の安全保障理事会は改組するべきだろう。国連憲章を侵して他国の領土を武力で奪おうとする国が、常任理事国のままであっていいはずがない。ロシアは抵抗するだろうが、総会決議で新しいやり方 に合意すればいいのである。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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