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UAEメディアが今になってイスラエルとの国交正常化を礼賛し始めた理由
パレスチナ自治政府はUAEを「パレスチナを支援するふりをしてイスラエルとの関係正常化を行った」と非難した。トルコやイランから「UAEはパレスチナを裏切った」という批判も出たが、トルコもイランもアラブ諸国ではなく、同じくアラビア語を話すアラブ世界でのパレスチナの孤立は決定的である。
ヨルダン川西岸併合問題の行き詰まりからわずか1カ月で
今回のイスラエル・UAEの国交正常化合意に至るプロセスを見ると、まさに瓢箪から駒が出るという言葉がぴったりである。
もともとは、1月にトランプ大統領が発表した中東和平案で、将来のパレスチナ国家になるはずのヨルダン川西岸にある「ユダヤ人入植地の97%をユダヤ側に編入する」と記されていた。132カ所の入植地に40万人のユダヤ人が住み、国際法上は「違法」とされている。
ネタニヤフ首相はトランプ和平案を受け入れ、西岸の30%の併合実施は、和平提案の実施と主張した。イスラエルの国会選挙を経て、7月1日以降に併合手続きを開始すると公表した。
それに対して、欧米では批判が強まっていった。グテーレス国連事務総長はパレスチナ情勢に関する安全保障理事会のオンライン会合で「最も深刻な国際法違反となり、2国家共存への期待を著しく害し、和平交渉再開の可能性を損ねる」と警告。欧州各国の1000人の議員が併合中止を求める共同書簡を出す動きとなった。
トランプ政権は国際的な非難の高まりを受けて、6月以降、ネタニヤフ首相に併合の見直しを求める働きかけを始めた。
イスラエル国内でも欧米からの反発を恐れて併合に対して慎重論が出た。一方、ネタニヤフ首相の支持基盤であるユダヤ人入植者からは「30%だけ併合して、残り70%をパレスチナに渡して、国家の樹立を認めるのか」という批判も出た。
結局、7月1日は何事もなく過ぎ、併合問題が行き詰まっていることを示した。その意味では、UAEがイスラエルと国交正常化の条件として併合停止を持ち出さなくても、併合の実施は難しくなっていたのである。
国交正常化合意の背景を探る米国での論調や分析を見ると、米国とイスラエルの間で西岸併合問題をめぐる対応が行き詰まったのが7月上旬であり、UAEとの国交正常化案は、その後で出てきた。つまり、わずか1カ月でまとまった急ごしらえの和平合意ということになる。
アラブ世界で最も野心的・戦略的なUAEムハンマド皇太子
西岸併合問題をめぐってトランプ大統領とネタニヤフ首相が身動きが取れなくなっているところで、UAEのムハンマド皇太子が同国の駐米大使を動かして、トランプ大統領の女婿で、中東和平の責任者であるクシュナー大統領上級顧問に、イスラエルとの国交正常化合意案を持ち込んだということのようだ。それをネタニヤフ首相も受け入れた。
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