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テロや殺人を扇動したのに、なぜか西側メディアに持ち上げられるイスラム指導者
カラダウィは単なる「著名なイスラム指導者」ではなかった MOHAMMED DABBOUSSーREUTERS
<イスラム法学者ユスフ・カラダウィは単に「影響力のあるイスラム学者」「スンニ派の代表格」と称されるべき人物ではなかった>
9月26日、エジプト出身のイスラム法学者ユスフ・カラダウィが死去した。彼についてロイター通信は「『アラブの春』の蜂起を支援し、エジプトや湾岸諸国の支配者をイスラム主義の説法で動揺させたムスリム同胞団の精神的指導者」、米ニューヨーク・タイムズ紙は「影響力のあるイスラム学者」と説明し、その訃報を伝えた。
しかし彼をイスラム教スンニ派の代表格であるかのごとく報じる妥当性については、検討が必要だ。
エジプトで4度投獄された後カタールに亡命したカラダウィは、1996年開局の衛星ニュースチャンネル、アルジャジーラに看板番組を持ち、数千万人の視聴者に向けて感情あらわにイスラム教を説くことで知られてきた。インターネットにもいち早く進出し、自身のウェブサイトを立ち上げた。
だが彼は単なる「著名なイスラム指導者」ではない。彼の主張に自爆テロの賛美や奨励、暴動の扇動、ユダヤ人やアメリカ人、同性愛者、背教者の殺害の正当化など、過激で暴力的な内容が含まれていたこと、そして彼が実際に大衆を動員する力を持っていたことは看過できない。
2001年には自爆テロを神に祝福された「殉教作戦」と正当化し、その実行者を「英雄」とたたえた。
04年にもパレスチナ人のイスラエルに対する自爆テロを「殉教作戦」と呼び、それを「神の正義の証し」と述べ、「体を爆弾に変える能力」は全能の神が「持たざる弱者」に与えた武器だと称賛した。加えて「何百人ものイスラム学者」がその「殉教作戦」を支持していると述べた。
「風刺画」暴動の背景にカラダウィの説教
デンマーク紙に預言者ムハンマドの風刺画が掲載された際には、世界各地でイスラム教徒による抗議デモが暴動と化し、200人以上の死者を出したが、風刺画掲載が05年9月であったにもかかわらず暴動の多くが06年2月以降に発生した背景には、カラダウィが2月3日にカタール国営テレビで「われわれは怒らなければならない」「怒りを世界に示せ」「立ち上がり、自分がムスリムであることを証明せよ」「われわれ自身で預言者の仇(かたき)を討たねばならない」などと説教したことが関係しているとみられる。
04年には、イラクにいる全てのアメリカ人は戦闘員であり、彼らを殺すことはイスラム教徒の義務だと述べた。同年、イスラエルの女は兵士だと断定して「殉教攻撃」の標的とすることを容認。06年には、ローマ教皇ベネディクト16世のイスラム教についての発言を「侮辱」だと批判。世界中のイスラム教徒に向かって、直後の金曜日を「怒りの日」とし、デモをするよう呼び掛けた。
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