コラム

テロや殺人を扇動したのに、なぜか西側メディアに持ち上げられるイスラム指導者

2022年10月12日(水)11時20分

09年にはユダヤ人を「イスラムの敵」と呼び「神よ、最後の1人に至るまで彼らを殺したまえ」と呪詛し、11年にはエルサレム防衛は全イスラム教徒の義務であり、命や金銭を含む全所有物を持ってエルサレム防衛に参加しなければ国全体に神罰が下るだろうと述べた。

彼は97年以来、祖国エジプトへの入国を禁止されており、15年には欠席裁判で死刑を宣告された。エジプトのほか、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンでもテロリスト指定されており、アメリカ、イギリス、フランスでは入国禁止となっていた。これらは彼の国際的評価を象徴する。

彼が世界に及ぼした負の影響は計り知れない。ヘイトをあおり、暴力とテロを賛美、奨励し、それを実行しないと神罰が下ると脅し、実際に大衆動員に成功した人物を、「イスラム教スンニ派に強い影響力を持つ」と描写すること自体が、宗教への差別や偏見を助長している。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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