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菅政権の「やっているふり中東外交」では、日本の国益を守れない
エジプトを訪問した茂木外相(8月16日) AMR ABDALLAH DALSHーREUTERS
<中東を歴訪してイランの新大統領とも会談した茂木外相だが、現実を直視できなければ利益を得ることなどできない>
8月15日からの中東7カ国・地域への外遊に先立ち、茂木敏充外相は記者会見で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認したい」と述べた。これは中東でもそのような国際秩序が尊重されるべきことを前提とした発言であるが、そもそも中東はそのような状況にない。
7月末にはオマーン沖で日本企業所有のタンカーが攻撃され船員2人が殺害された。米英などはイランが背後にいると批判、ブリンケン米国務長官はイランが自爆ドローンを使用したと確信していると述べた。米中央軍の報告書はドローンがイラン製であることを示す証拠があるとしている。
しかし日本は外務報道官が「わが国として深く懸念しており、このような攻撃を非難します」と声明を出しただけで、イランを非難することはなかった。
ここ数年でドローン技術を向上させ「中東のドローン大国」となったイランは、自らドローン攻撃を実行しているだけでなく、中東各地のテロ組織や武装組織にドローンやその部品を提供し、攻撃を「代行」させてもいる。
英民間研究機関の紛争兵器研究所は昨年、イラン製のドローンの部品がバーレーン、イエメン、サウジアラビア、スーダン、イスラエル、イラク、シリア、アフガニスタンの8カ国で発見されたと報告。NPO過激派対策プロジェクトのアナリストも、自爆ドローン計画は地域への影響力拡大を目指すイランの中核的要素だと警告した。
イランの動きは世界を不安定化させる
世界のエネルギー資源の約3分の1はホルムズ海峡を通る船で輸送される。イランの動きは地域だけでなく世界を不安定化させる脅威でもある。
茂木外相の訪問先にはイランも含まれる。日本が本当に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を重んじるならば、タンカー攻撃に強く抗議すべきだ。そこから目をそらしたままでは、茂木外相の主張する「中東地域の平和と繁栄へのコミットメント」など絵に描いた餅にすぎない。
日本のタンカーは19年にもオマーン沖で攻撃され、このときもアメリカはイランの仕業だと断定したが日本は一切抗議しなかった。イランは日本を「攻撃しても抗議すらしてこない最弱の米同盟国」と侮っている可能性がある。
8月15日にはイランの隣国アフガニスタンでイスラム過激派組織タリバンが全権を掌握する事態となった。タリバン幹部はイスラム法統治を実施すると宣言、またアフガニスタンだけではなく世界をイスラム法によって支配することを目指すとも述べた。
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