コラム

1ドル札がテロリストの証拠......反体制派の摘発に躍起になるトルコの暴走

2020年09月04日(金)19時00分

ゴルゲは2019年5月、トルコのエルドアン大統領とトランプ米大統領の電話による「取引」で解放が決まり、今年4月にようやく司法拘束が解除された。彼は米FOXニュースの取材に「アメリカは多くの問題を抱えているかもしれないが、ほかのほとんどの国と比べてはるかに優れている。違いを受け入れ、ありのままのあなたを受け入れてくれる」と語った。

NASAは一度解雇したゴルゲと7月半ばに再び雇用契約を結んだ。「私はスパイでもテロリストでもない。科学者だ」と語る彼は、職場復帰をなにより素晴らしいことだと喜ぶ。しかし失われた4年間が戻ることはない。

中国におけるウイグル人の迫害も、国家によるテロ容疑の乱用、市民の不当な拘束、虐待の深刻な事例の1つだ。トルコと中国はここ数年、経済的・軍事的・政治的連携を強化している。こうした人権侵害を行う国家同士の接近を、われわれは警戒すべきである。

<本誌2020年9月8日号掲載>

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9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・日本の行方。

プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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