コラム

「偽情報・誤情報」研究が直面する5つの課題

2024年12月29日(日)07時38分

課題4 データアクセスに制限がある

この領域の多くのデータはSNSプラットフォームなどの民間企業が保有しており、研究者が扱えるのはその一部にすぎない。これまでの、そしてこれからの研究は、民間企業が提供するデータに依存している。


さらに特にやっかいなのはWhatsAppやTelegramなどメッセンジャーである。メッセンジャーでやりとりされている内容は原則として公開されない。

その一方で、入手困難なものの、そこに莫大なデータがあることがわかっているために、過剰にそのデータに依存している可能性も危惧されている。確かに、これまでの調査研究におけるSNSプラットフォームからのデータは非常に貴重で、数多くとりあげられてきた。

しかし、SNSプラットフォームは偽・誤情報問題を引き起こした張本人と名指しされることも多い。その犯人が自分たちに不利になるようなデータを渡していると考えるよりは、都合のよいデータを渡していると考える方が自然だろう。

実際、フェイスブックは調査の最中にモデレーションポリシーを変更して調査結果に影響を及ぼしたことがある。フェイスブック・ファイルには同社社内のこうした問題がいくつも暴かれている。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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