コラム

「偽情報・誤情報」研究が直面する5つの課題

2024年12月29日(日)07時38分

課題5 調査研究は米国を対象したものばかりである

偽・誤情報問題は世界規模で発生している問題だが、ほとんどの調査研究および対策は北半球、特に英語圏さらに米国に偏っている。


そして、共和党と民主党に焦点を当てたものが多い。米国を対象とした調査結果が、そのまま他の国にあてはまると考えるのは無理がある。そもそも複数国を対象にした調査研究では、国による違いが報告されている。

たとえば、デジタルメディアと民主主義の因果関係に関する496の論文を調査した「A systematic review of worldwide causal and correlational evidence on digital media and democracy」では、地域差が大きかったことなどが指摘されており、さらに米国の論文には、一般化することへの注意が欠けていることが多かった。

きわめて限定された対象の調査結果がどこまで参考になるのかわからない。少なくともに安易に手本にすべきではないはずだが、なぜかわが国では先行事例として欧米の事例がよく取り上げられ、追随するような動きがある。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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