コラム

「偽情報・誤情報」研究が直面する5つの課題

2024年12月29日(日)07時38分

領域にとらわれない俯瞰した視点が欠落

5つの課題を見ると、いかにこの問題への対応が遅れているかわかる。しかし、遅れているのは偽・誤情報問題への対応だけではないのである。偽・誤情報問題のとらえ方という基本的な問題も整理されていない。


「ハイブリッド戦」あるいは「超限戦」という言葉がある程度知られるようになって久しいが、それらに対応した態勢はできていない。

偽・誤情報は「ハイブリッド戦」あるいは「超限戦」を構成する要素のひとつだが、戦い全体の中での役割が充分に把握できているとは言えない状況だ。それができない理由は、俯瞰して全体を見る役割の組織がないか、あっても機能していないからだ。

日本の官公庁も、それぞれバラバラに施策を進めていて全体像を把握している組織があるようには見えない(必要性は文書には書かれているが)。

個々の領域にとらわれた対症療法は、「ハイブリッド戦」あるいは「超限戦」の格好の餌食でしかない。

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プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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