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検索結果をプロパガンダと陰謀論だらけにするデータボイド(データの空白)脆弱性
5年間ほとんど放置されてきたデータボイド脆弱性
データボイド脆弱性には5つの対応があることが指摘されている。
1.ニュース速報
大きなニュースが速報で流れると、それを反映した検索が大量に発生する。しかし、その検索に対応したコンテンツがほとんどない場合も多く、ここにデータボイド脆弱性がある。あまりニュースに登場しない地名が現れる場合は特にそうだ。
2.戦略的新用語
新しい言葉を作ったり、過去に使われていてもあまり知られていなかった言葉を使うこともある。当然ながら、その用語で検索しても結果はほとんどないため、操作が可能となる。
3.時代遅れの言葉
ほとんど使われなくなった言葉も利用できる。使われなくなっても言葉は検索エンジンに残る。ニュース速報のように爆発的に伸びることないが、たまに検索する人を騙すことはできる。
4.言葉の組み合わせ
単語だけではなく、言葉の組み合わせでもデータボイドが生まれる。2018年の夏にバチカンで性的問題のスキャンダルが起きた際、「バチカンの性的虐待」と「バチカンの小児性愛者」と検索すると全く異なる結果が出ていた。
5.問題のある検索
前述の「ホロコーストはあったのか?」や「オバマはクーデターを計画しているか?」はまっとうなサイトは取り上げないテーマであるため、陰謀論サイトが上位に来やすくなっていた。データボイド脆弱性が生まれやすくなっている。
データボイド脆弱性の問題は5年前のデータ&ソサエティ研究所の「DATA VOIDS Where Missing Data Can Easily Be Exploited」で明らかになったが、その後ほとんど研究されていない。正確にはデータボイド脆弱性に言及する研究はあったが、データボイド脆弱性そのものを調査研究したものはないようだ。検索エンジンは対処を進めていたが、それ以外の調査研究は進まずデータボイド脆弱性は5年間放置されていたことになる。
その理由は根本的な対策が難しいためと、ヘイトや偽情報そのもののようにはっきりと目に見えるわかかりやすいものではないためだろう。研究や対策が進まない一方で悪用は進んでいた。
中国が多用するデータボイド脆弱性
実はデータボイド脆弱性には前述した以外にも深刻な問題がある。それは英語圏以外の対処が遅れていることだ。この問題は2つの側面があり、ひとつは単純に英語以外の言語で検索した結果の調整は英語ほど進んでいないこと、もうひとつはたとえ英語であっても英語圏以外の地名などの固有名詞の多くは英語で表現されることがないため、データボイド脆弱性が発生しやすいことだ。
中国はこのことを承知しており、デジタル影響工作に利用している。たとえばグーグルとBingのニュース検索およびYouTubeでの検索で中国の国営メディアが16%以上を占めていたという調査結果をブルッキングス研究が発表している。さらにXinjiang(新疆)で検索すると、ニュース検索では88%、YouTubeで検索すると98%の確率で中国の国営メディアが検索結果に表示された。ちなみに日本に関係する言葉では731部隊で検索すると、ニュース検索では100%、YouTube検索でも90%以上だった。
また、少数民族のインフルエンサー=フロンティア・インフルエンサーを利用して多数の動画をYouTubeにアップし、検索結果を侵食している。
狙われやすい日本
こういった事情から日本はデータボイド脆弱性を突いた攻撃の格好の標的になり得る。たたとえば、2021年11月1日から2022年2月28日の120日間、グーグルとBingのニュース検索すると、前述のデータ&ソサエティ研究所の論考などちゃんとしたページが上位に表示される。しかし、「データボイド脆弱性」で検索すると、私のnoteのページが上位に表示される。ちょっと言葉の組み合わせを変えるだけで簡単に上位に表示される。日本語では「データボイド」という言葉そのものにデータボイド脆弱性が発生している。
さらに日本の地名は世界の多くの国の人にとってなじみがなく検索されることも稀だろう。自然災害などが起きた時にデータボイド脆弱性が悪用される可能性は高い。こうしたことを考えると、非英語圏では特にデータボイド脆弱性に留意した誤・偽情報対策を考える必要がある。安易にSOTENを薦めることは危険だ。
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