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国王が譲位!? 若き皇太子と揺れ動くサウジアラビア
英語メディアでは彼を「Mr. Everything」と呼ぶことがあるが、まさにそのとおりである。サウジアラビアでは制度上、国王が最終的な実権を握っているが、現国王は80歳を超えた老齢で、認知能力が衰えているとの説も根強い。譲位の噂が本当なら、かわいい実の息子に速やかに跡を継がせることが残された最後の仕事といえるかもしれない。
カタル危機、改革の停滞、イスラエル訪問報道...
だが、そうは問屋が卸さない。前述のとおり、MbSの政策は順調に進んでいるものばかりではないのである。5月からはじまったいわゆる「カタル危機」では、MbSはアブダビ(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド皇太子とともに主導的役割を果たしているとされるが、小国カタルの抵抗が思いのほか強く、国際社会の同情もカタル側に集まっているのが現状だ。
MbSイニシアティブの目玉というべき「サウジ・ビジョン2030」そしてその中間試験ともいうべき「国家変革計画」(NPT)は、基本的にサウジアラビアを石油依存体質から脱却させることを目標としている。その目的、方向性に疑問はない。だが、目標として掲げた数字が野心的すぎるとか、タイムテーブルに問題ありといった批判も出てきている。
たとえば、改革の柱となるべき国営石油会社サウジアラムコの新規株式上場(IPO)は来年なかばごろに予定されているが、ここにきて延期説も出はじめた。このIPOは、もともと改革実行のための原資に想定されていたため、IPOが遅れれば、それだけ改革も遅れることになるわけだ。とくに2020年を基点とする国家変革計画には早くも見直し説が流れている。
また、ここにきて外交や宗教面がきな臭くなっているのも気にかかる。9月はじめMbSがイスラエルを訪問したというニュースが駆け巡った。両国には外交関係がなく、もし、これが事実なら大騒ぎである。この事件に関してサウジ側は基本的に否定しているし、イスラエル側はコメント拒否という、いつもどおりの対応だ。イスラエル系のデブカファイルとかロシアのスプートニクなど眉唾もののメディアばかりが大きくあつかっているので、報道の信憑性には疑問符をつけざるをえない。
不可思議な知識人の逮捕から、女性の運転解禁へ
しかし、もう一つのきな臭い匂いは国内からであり、こちらはおそらく事実なので、サウジアラビアにとってはより深刻だといえる。つまり、9月はじめごろにサウジアラビアの知識人数十人が逮捕されたとの報道があったのである。
このなかには、サルマーン・オウダやアワド・カルニー、アリー・オマリーら著名なイスラーム法学者、説教師らも含まれている。オウダは、アルカイダのオサーマ・ビンラーデンが尊敬する知識人として名前を出していたことで一躍有名になった人物であり、1990年代はほぼ当局に捕まっていた。その後、釈放されてからは、政府批判は鳴りを潜め、比較的自由な活動をつづけていたので、当局にとって危険人物とはみなされなくなった(その結果、過激派からは人気がなくなったが)、と少なくともわたしは考えていたのだが、実はそうでもなかったということだ。
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