「片づけを諦めた」──アメリカ人の神「こんまり」の人間宣言の衝撃と「ときめき」の真髄とは?

こんまりメソッドはアメリカでも熱烈な支持を集めたが…… ADAM CHRISTOPHERーNBCUNIVERSALーNBCU PHOTO BANK/GETTY IMAGES
<アメリカの「こんまり旋風」は大量消費社会でのストレス緩和だけでなく、巫女の経験があるというスピリチュアルな要素にも理由が>
アメリカの「こんまり信者」の中には、裏切られたと感じた人もいただろう。
片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵が先頃、大量の仕事で多忙な毎日を送り、3人の幼い子供を育てる日々の中で「(家の中を整理整頓しておくことを)諦めた」と打ち明けた。「今の私にとって大切なのは、子供たちと過ごす時間を楽しむことだと気付いた」というのだ。
こんまりメソッドで身の回りのガラクタを片づけていた膨大な数の人たちの中には、この言葉を聞いた瞬間、すっかり気持ちが冷めた人もいたかもしれない。
私と妻は月に1度くらい、米東部ニューイングランド地方の築230年になる2階建ての納屋にあふれるガラクタを片づけなくては、という話をする。
「週末を何回かつぶさないと全部は片づかないと思う」と妻は言い、「毎週1箱ずつ段ボールを片づけるだけでも進歩だよ」と私が言う。こうしてこの2年間に片づけたのは段ボール3箱分。今回の告白で近藤も人間だったと分かり、私は少しときめきを感じた。
近藤が著書や動画配信の番組で説いたのは、限りあるスペースを有効に活用し、慌ただしい日々に秩序をもたらす方法論だ。
その際、捨てるものを無理に見つけようとするのではなく、「ときめき」を感じるものを手元に残すという発想で臨むことや、生活の重荷となるものの管理をポジティブに、優雅に捉えることを勧めている(私も子供たちと「洗濯物を畳む会」を開いて、退屈な作業を楽しいものにした)。
日本の住宅が狭いことは有名だが、ニューヨークのマンハッタンの住宅も同じくらい狭い。アメリカでも、近藤のようにポジティブなアプローチを説くチャーミングな人物の登場は待望されていたのだ。
しかし、アメリカで「こんまり旋風」が巻き起こった理由はほかにもあった。こんまりメソッドは、大量消費主義によるストレスを和らげるためのポジティブなアプローチという性格も持っていたのだ。こんまりメソッドの魅力は、捨てるものと残すものを仕分けする具体的な方法論を示したことだけにとどまらなかった。
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