ハロウィンが栄えて国が滅ぶ理由
ワールドカップは4年に1回であるから、たまたま私が大学2年の時にこれがぶつかったに過ぎない。しかしハロウィンは毎年10月末にある。今の無産の若者や大学生はもっと過酷な現状であると思うとき、私は落涙を禁じ得ないのである。
ハロウィンという「明」には、必ず「暗」がある。レンブラントはその「暗」をむしろ強調することで劇的な市民の動静を切り取った。今のメディアは手っ取り早い「明」にしかカメラを向けない。確かに被写体としてはそちらの方が「面白味」がある。しかし私は、ハロウィンという「ハレ」に参加することができず、4畳半の自室に籠って38円の木綿豆腐を酒のつまみにしながら、西村賢太の小説を読んでいる若者の方に未来や希望を感じる。
こういった「暗」へのフォーカスこそ、いま最も求められているメディアの姿勢である。人間は暗闇を見るとき、最初それをただの黒い扁平な模様としてしか認識しない。しかし次第に人間の眼球が順応してくると、その暗闇には実に様々な模様があり、時に後景が脈動し、そこの中にも鮮やかな景色があることを知る。
これを救い上げることが文学や映画、カルチャーの使命だが、有産階級の攻撃的な世論があっというまに黒を白にするSNS世界にあって、こういった「暗部の風景」は打ち捨てられる。ハロウィンへの垂直的な順応は、この国の軽佻浮薄で底の浅い焦点を、いみじくもその暗部を黙殺するという行為によってさらけ出しているのである。
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