コラム

オリンピック開催を日本は生かせるか(フランスは生かしています)

2019年03月20日(水)18時22分

私も日本に住んでいるだけに仕事のリズムは結構激しいのです。運動に時間とエネルギーを注ぐ余裕と意味があるのか、いつも良心が咎めるのです。それが約10年前、当時、野茂英雄のフィジカル・コーチを務めていたストロングス代表取締役の大川達也氏に「人間の体は常に運動を必要としている。そのニーズに気づくことが大事。1日に何か一つ、やればいい」と言われ、納得しました。ストレッチ、ウォーキング、腕立て、瞑想......毎日20分だけでも、出来ることはあるはずです 。ガッチリと運動をするときほどの気合いは必要ありません。プチ運動をした後は、仕事の効率も上がります!

しかし場所の問題もありますから、パリでは、中小の公園のスポーツ設備を再び綺麗にしつつあります。子供用の雲梯から、大人用の懸垂バーまで、遊びながら運動ができる台ですね。野外ジムというコンセプトはアフリカや南米では先進国以上に進化しています。東京も、五輪までに街のあらゆる汚い公園を綺麗にし、プチ野外ジムを必ず入れるようにすれば、一つのレガシーを確実に残すことができると思います。

社交しながらの運動が好き

そもそも、社会人の私たちにとって運動の意味とは何でしょうか。2019年1月29日、長友佑都選手の長年のトレーナー 、竹口正範氏は『CUORE ONE』というプライベートジムを開業しました。直前の取材では「自分に合った、自分に必要なものを選択できることかが大切。人は皆それぞれ違う。今後は『何が正しいか』ではなく、自分に合った運動とツールを求める時代だね」と教えてくれました。

パリジャンとパリジェンヌは、自分にあった運動は、社交的な運動と気づいたようです。セーヌ川沿いに現れたパリっ子たちはグループ・ランニングを楽しむ理由は社交的なアクティビティだからです。アメリカ人と決定的な違いはそこにあります。フランス人は一人で追い込みたいのではなく、大勢で楽しく運動したいのです。イヤフォンをして、一人の世界で無になるのではありません。

東京人はいかがでしょうか。好奇心旺盛な日本人の性格を知る私から見て、しばらくはありとあらゆるニュースポーツに挑戦をしそうですね。都内の若者に人気上昇中のボルダリングはその証なのではないでしょうか。日本人は新しいトレンド(知恵)を知り、学ぶことに熱心なのです。

だとすれば、東京五輪とパリ五輪のレガシーは当然異なるはずです。東京は、スポーツを通じて高齢者の運動習慣を高めながら、若い世代の遊び心を刺激したいのですから、とにかくみんなの運動神経に訴える政策が必要なのです。

プロフィール

フローラン・ダバディ

1974年、パリ生まれ。1998年、映画雑誌『プレミア』の編集者として来日。'99~'02年、サッカー日本代表トゥルシエ監督の通訳兼アシスタントを務める。現在はスポーツキャスターやフランス文化イベントの制作に関わる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story