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遠藤誉から、大陸へのメッセージ
だが、おかしいじゃないかと。どうして、苦しんでいる人民のために新中国を建設すると言っておきながら、自国の民を飢え死にさせて知らん顔しているのか。建国後には、もう平和になったというのに何千万という自国の人間の命を犠牲にした。餓死させたり、文化大革命で互いに戦わせたり、投獄したりという形で死なせてしまった。平時に自国民をここまで死なせる指導者というのは、いったいどんな人間なのか。自分の人生の戦いの一環として、毛沢東よ、あなたは何者なんだ。何をしてきたんだ、なぜこんなことをしたんだ、という問いかけのようなものが心の中にあった。
今回、毛沢東について書いてほしいと言われて、「毛沢東って誰?」というところから書くことにした。そして、抗日戦争を勇猛果敢に戦ったという部分に差し掛かったときに、待てよと。色々な資料を読んでいくうちに、矛盾することが見つかった。中国では、(中国側のスパイ)潘漢年(ハン・カンネン)は日本から色々な情報を取り入れて毛沢東に渡して、毛沢東が非常に勇猛果敢に日本軍と戦えるようにした人物として位置付けられている。ではなぜその潘漢年を毛沢東は逮捕して、口を封じなければならなかったのか。日本軍から情報をもらった潘漢年が、なぜ(日本側から)情報提供料をもらわなければならないのか。整合性がないと思い、すべての資料を徹底的に調べていくうちに、彼が接触した外務省の岩井英一氏の回想録を見つけた。その結果、ようやく謎が解けた。潘漢年はなんと、日本軍と共謀していたのではないか、と。
それが分かったことで、私がずっと生涯抱えてきた何十万もの人を餓死させた毛沢東に対する非常に複雑な恨み、私の人生を返してくれ、私の父の苦しみを返せ、という憤りが消えてしまった。ここまでのことをやる人間ならば、何十万もの人を餓死させることなど彼にとっては小さなことに過ぎなかったのだろうと。自分が帝王になるためならどんなことでもやる、手段を選ばない人間だ、と。それを初めて知ることによって、長春で餓死した人たちに対して生涯をかけて抱いてきたこだわりというのが、初めて消えた。初めてピリオドを打てたし、初めて楽になった。自分が国を取るためには日本軍と手を結ぶということさえやる。こんなことまでやる人間であるならば、自国民を殺すくらいなんとも思わないだろう、と思うようになった。
――納得したということか
そうだ、納得した。
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