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遠藤誉から、大陸へのメッセージ
――著書『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中で、毛沢東の時代から続く中国人の精神構造について「大地のトラウマ」という言葉を使って説明している
わずか2万人ほどになっていた中国共産党軍がなぜ勢力を伸ばし、毛沢東が政権を取ることができたのか。それは毛沢東が、人口の90%ほどを占め、農奴のように使われていた農民に対して、地主に反抗して自分たちの自由を取り戻せ、蜂起せよ、立ち上がれ、と呼びかけたからだ。立ち上がった農民たちは、地主1人に対してみんなで殴ったり蹴ったり石を投げたり、地主が死ぬまで色々なことをやる。それを思い切りやらない人間というのは革命の心がない「反革命分子」として逆にみんなにやられてしまうし、今度は自分が血祭りにあげられる。
退路をなくさせる――これは毛沢東のすごい戦略だと思う。常に1つの標的を定めてそれを徹底してやっつけ、やっつけた人間は人格的にも身分的にもとても高く位置付けられて、良いポジションが与えられ、兵士になったりする。そういう戦いを繰り返させて、中国全土を覆うように広げていった。
中華人民共和国が誕生する過程がそうだったため、60年代に起きた文化大革命のときも、標的を作ってみんなで罵倒して殴ってということをやった。それをやらないと、お前は革命の心が強くないと言われてやられてしまうからだ。中国の人民はそういう精神文化の中で育ってきて、それが心の中に染みついている。だから反日暴動が起きたときにも、反日を叫ばないとお前は売国奴だと言われてしまうので、誰かが叫びはじめたら自分も叫ぶ。中国が誕生する過程で培われてきたこの精神性、精神的な土壌のことを、私は「大地のトラウマ」と呼んでいる。
――習近平政権は今、そのトラウマに火をつけるようなことをやっているのか
習近平政権には2つの側面がある。1つは、習近平はそうした反日暴動は最終的には反政府デモに行きつくことを前・胡錦涛政権時代から学んでいるので、反日デモを絶対に起こさせないように抑えている。反政府デモが起きたら今の政権は持たないということを十分に分かっているからだ。しかし一方で自分が愛国主義教育をやってきた手前、自分が日本に対してこれほどの強硬だということを人民に見せていないと、「お前が売国政府だ」と必ず言われることになる。あれほど強硬な対日強硬策をやっているのはそのためだ。
――習近平自身が、「大地のトラウマ」を抱えているということか
そうだ。人民の声を一番怖がっている。
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