コラム

大西卓哉宇宙飛行士「きれいごとではなく、僕らのリアルを知ってほしい」【独自インタビュー】

2025年03月14日(金)08時55分

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単独インタビューに応じた大西宇宙飛行士 筆者撮影

──その場合、大西さんの一番の強みは何ですか。

大西 強み......そうですね、パイロットも宇宙飛行士もそうですけれど、ある意味危険と隣り合わせの環境でずっと仕事をしているので、その中で巨大な機械的なシステムを運用していくことにはそれなりに経験を積んでいる自信はあります。

パイロットにしても宇宙飛行士にしても、プレッシャーのかかる場面や緊張感のある場面が仕事の中で多いですよね。人間って普段のパフォーマンスが100だとしたら、緊張するとどうしても下がるじゃないですか。

でも、パイロットや宇宙飛行士として場数をずっと踏んでいると、だんだんその落ち幅が少なくなってくるんです。僕はそういう経験を積んでいるという自信があります。そういうところが、自分に次のステップがあるとしたら強みになると思います。


──宇宙関係を取材している記者の立場からすると、ISSの経験なしにいきなり月に行くのはちょっと難しいと思うので、大西さんの世代に一番チャンスがあるのかなと感じるのですが。

※筆者注:インタビュー当時、アルテミス計画における日本人の月着陸は1人目が28年、2人目は32年を目指すと見られていたが、現在は予定が後ろ倒しされている

大西 そうですね。そこは多分これからすごく議論されていくと思いますが、私も同感です。もちろん一発で月面に行ってちゃんとできる人はいると思うんですけれど、やっぱりリスクがあって、場数を踏んでこそついてくるスキル、経験値は絶対にあります。そこは自分も負けないので、頑張る余地はあるなって思いますけれどね。

──もし大西さんが月に着陸できるとしたら、何が一番したいというか、何を一番意識したいですか。

大西 「しっかりとそのミッションを遂行する」、そこが一番ですね。もちろん「自分が宇宙飛行士として月面に立ってみたい」という純粋な子供じみた願望はありますけれど、一番はそこにミッションしに行くので、それをしっかりとこなしたいです。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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