コラム

コナン細菌、クマムシ...放射線に強い生物の「耐性メカニズム」は「被曝リスク時代」の希望となるか

2024年12月23日(月)22時45分

人類の宇宙空間での活動は、現在はISS(国際宇宙ステーション)が中心です。ISS内で働く宇宙飛行士は毎日、地球表面の100倍以上に相当する放射線量を被曝しています。

さらに有人月面探査が始まると、受ける放射線量は年間420ミリシーベルト程度と推定されています。日本では年間2.1ミリシーベルトが宇宙や大地から浴びる放射線量と見積もられているので、実に200倍です。今後、一般の人も気軽に宇宙旅行をしたり、惑星での活動も考えられるような時代になったりするためには、放射線からの保護を今から十分に対策しておくことが必要不可欠です。

加えて、高強度の放射線の被曝リスクは、宇宙開発の最前線や、核兵器が使われる戦争だけではありません。これまでの原発事故などでも分かるように、地球上で普通の生活をする私たちも、放射線の漏洩や放射性物質を用いたテロなどによって、予期せず高い放射線量を浴びてしまう状況に置かれてしまうかもしれません。放射線抵抗性生物が取っている化学的な戦略の知見を上手にヒトに活かし、暮らしの中の放射線リスクの軽減にも役立ててほしいですね。

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2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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