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原木を叩く、浸す、通電する... 民間伝承から生まれた奇妙なシイタケ増産法
「浸水打木」は誰もが再現できる、効率的な増産法(写真はイメージです) nikkimeel-iStock
<理屈は不明でも効果は確か──刺激を与えて収量を増やすシイタケ栽培は科学技術の先を行く?>
2月初めに、大分県農林水産研究指導センターは「シイタケの原木栽培で『ほだ木(シイタケ菌を接種した原木)』をハンマーで10回叩くと、収量が倍増した」と発表しました。
このテクニックを全国で使えば、今年から日本のシイタケ生産量は倍増する?!と考えたくなりますが、実はシイタケ農家では昔からほだ木を叩いています。理屈がわからないながらも、シイタケの収量が確かに増えるからです。さらに原木は、水に沈められたり電気ショックをかけられたりすることもあります。民間伝承から生まれた、奇妙なシイタケ増産法を紹介しましょう。
人工栽培は江戸時代から
生シイタケは、エノキ、ブナシメジに次いで日本で3番目に多く生産されているキノコです。年間生産量は7万280トン(2020年)で、都道府県別の生産量は、1位徳島県7,912トン、2位北海道5,424トン、3位岩手県4,734トンです。
栽培方法には、ほだ木を使う原木栽培(7.7%)と、おがくず等と養分を混ぜた培地に菌を植え付ける菌床栽培(92.3%)があります。原木栽培は、手間とコストがかかるうえ重労働なので、取り組む農家は年々減っています。けれど、原木栽培のシイタケは菌床栽培のものよりも味、肉質、香りに勝るので、農家は低コストで収量をあげる方法を探って日々奮闘しています。
シイタケは、生食とともに乾シイタケとしてもなじみ深い食材です。乾シイタケは2020年に2,634.6トン生産され、都道府県別では1位の大分県産が約4割を占めています。
日本ではシイタケは古くから自生していました。もっとも、マツタケやマイタケのように際立った香りがあるわけではないので、かつては特別には注目されていませんでした。
9世紀頃に中国から乾シイタケとして食べる方法が持ち込まれて香りや旨味が知られるようになり、とくに精進料理の出汁として重視されるようになりました。日本産の乾シイタケは中国への輸出品としても重要でした。曹洞宗の開祖、道元(1200-1253年)が執筆した「典座教訓」には、日本船が着くと寺の老僧が乾シイタケ(倭椹)を買いに行った逸話が紹介されています。
シイタケの人工栽培は、江戸時代に始まりました。豊後国(現在の大分県)の炭焼きの源兵衛が、炭にする木に鉈(ナタ)で傷を付けて放置していたらシイタケが発生したことから、「鉈目栽培法」を発見したと言われています。この栽培法は、原木に鉈で傷をつけて、その傷口にシイタケの胞子(親シイタケから飛び出すシイタケの「子」)が自然に飛んでくるのを待つという博打のような方法でした。
明治以降に「胞子の粉末を水に混ぜ込んで原木に植え付ける」「おがくずを使って種菌を作る」などの栽培技術の進歩があり、1943年に現在と同じ原木栽培法が確立しました。
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