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日本はいちばん門戸が広い? 宇宙飛行士選抜試験を読み解く
体験や成果を外部に伝える表現力・発信力も必要に(写真はイメージです) dima_zel-iStock
<13年ぶりに宇宙飛行士候補者を募集するJAXA──応募資格のうち、学歴と医学的特性を大幅に緩和した意図とは? 各国機関と比較した合格の難易度は?>
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月19日、13年ぶりに宇宙飛行士候補者の募集要項を発表しました。応募受付は12月20日から来年3月4日までで、エントリーシートによる書類選抜と、0次から3次の選抜試験を行います。
JAXAは日本でただ一つの公的な宇宙飛行士の募集機関です。今回は、国際宇宙ステーション(ISS)や、アメリカの主導で計画を進めている月周回有人拠点「ゲートウェイ」での活躍が期待される人材を若干名採用します。合格者のJAXAへの入社は2023年4月、宇宙飛行士に認定されるのは25年3月頃になる見込みです。
応募条件や試験内容は、前回、宇宙飛行士試験を行った2008年から変更があります。募集要項からJAXAが求める最新の宇宙飛行士像を読み解きましょう。
期待される3人目の女性飛行士
今回の募集のキーワードは、"多様性"と"科学コミュニケーション"です。
まず、応募資格のうち、学歴と医学的特性が大幅に緩和されました。
前回は、応募者は理学・工学など自然科学系の4年制大学卒以上で3年以上の実務経験(大学院の修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の経験ありとみなされる)が必要でした。
今回は、学歴は問われず、文系・理系のどちらの人でも応募が可能です。「3年以上の実務経験があること」を求められる部分のみ変更がありません。実務経験は、一般には「社会人経験」を示します。年齢制限はありませんから、中学卒業後、3年間働いた人も応募できることになります。
もっとも、第0次選抜では、英語試験に加えて、大学教養課程程度の一般教養試験と国家公務員採用総合職試験(大卒程度)相当の科学分野の試験が課せられます。学歴や専門分野による制限を撤廃して間口を広くして、試験で実力や適性を判断する態度を徹底するということでしょう。
次に、前回は158~190センチだった身長条件は、149.5~190.5センチになりました。体重や泳力など他の医学的特性の多くも、「身体的特性によって活動が制限される場合がある」「泳力を訓練時に習得する」等の表記になり、応募時の前提条件ではなくなりました。
今回の応募要項には「女性の活躍を推進する」と特記されています。
現在、現役の日本人宇宙飛行士は7名全員が男性です。前回は応募者963名のうち、女性は124名(13%)でした。今回、JAXAは女性応募者が30%になることを目標にしています。
日本人女性の平均身長は158cmです。身長条件の緩和は、身長が足りなくて応募できない女性を減らすための方策とも考えられます。実は、女性の積極的な登用のために「女性枠」を作ることも検討されましたが、宇宙飛行士の採用人数は数名と少ないことから見送られました。けれど、向井千秋さん、山崎直子さんに続く3人目の女性宇宙飛行士誕生が期待されていることは、間違いなさそうです。
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