コラム

AI時代の最重要スキルは「自分とつながること」──『人生の目的の見つけ方』に学ぶこれからの生き方

2020年02月14日(金)13時05分

「こうあるべき」という社会通念から解放されたとき、自分の本質が姿を見せ始める NiseriN-iStock

<これからはプログラミングや読解力が必要だという主張もあるが、長い目で見ていちばん重要なのは、他者に求められていることと自分がやりたいことを見分ける能力だ>

エクサウィザーズ AI新聞(2020年2月1日付)から転載

AI時代にどのようなスキルが必要になるのか。プログラミングや読解力という意見があるが、僕は「自分の本質とつながる」というスキルが一番大事になると考えている。

小学校でのプログラミング教育や、大学でのAI関連の勉強することも大事だと思う。昔の「読み書きソロバン」が今は、プログラミングやAIスキルなんだと思う。ただ50年前には有効なスキルだったソロバンが今ではほとんど不要なスキルになったように、今のプログラミングやAIスキルが若い世代にとって生涯を通じた有効なスキルになるとは到底思えない。10年後に有効かどうかも分からないと思う。

同様に読解力が50年後も有効なスキルかどうかは分からないと思う。AIが東大の入学試験で読解力だけ合格点を取れなかったことから、AI時代には読解力が必要になるという主張がある。東大に入学できることがAI時代を生き残るスキルとつながるのかどうかは、よく分からない。しかしそんなことよりも僕自身は、読解力の今後の重要性さえ疑わしいと思っている。

情報収集は双方向に

これまで何世紀もの間、情報を広く普及させるには文字というメディアが最も有効だった。広く伝えるには文字しかなかったし、それを読んで理解する読解力も何世紀にも渡って重要スキルであり続けた。

しかし今は簡単に動画を撮ってインターネット上で公開できる時代。動画は文字よりも圧倒的に情報量が多い。これまでYouTubeは子供や若者向けの娯楽作品が多かったが、昨年ぐらいからニュースやビジネス情報を取り扱うチャンネルが増えている。この傾向は今後ますます顕著になり、本に書くような情報もどんどん動画になっていくことだろう。何十年後かの未来には、本の読解力は過去情報にアクセスするためだけの限定的なスキルになると思う。今の古文、漢文のような感じになると思う。なぜなら、繰り返しになるが、文字より動画の方が情報量が圧倒的に多いからだ。そして人間にとって、音声と表情で情報を伝えることが、文字よりも自然な情報伝達方法だからだ。またネットの双方向性を利用して、分からない部分を質問すれば、即座にどこからか解答が寄せられてくる。情報収集は文字を通じた一方通行から、映像、音声を交えた双方向に軸足を移していくのだと思う。

今はまだ重要な情報の多くは文字で記録されているので読解力は重要だが、何十年間かのスパンで見れば、重要スキルの座にい続けることは多分ない。断言してもいい。

僕には高校生と大学生の二人の息子がいる。二人には、とりあえず即戦力となるデジタルスキルと読解力を身につけるように勧めている。ただそれらのスキルが、彼らの一生を通じての最重要スキルになるとは到底思えないのだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story