コラム

AI時代の最重要スキルは「自分とつながること」──『人生の目的の見つけ方』に学ぶこれからの生き方

2020年02月14日(金)13時05分

さて本題に入ろう。僕はAI時代に不可欠な最重要スキルとは、自分の本質とつながることだと思う。AIの最大の強みは、過去の情報からその傾向をつかみ、その傾向の延長線上に未来を予測すること。そのスキルでは、AIは人間より圧倒的に優秀だ。

一方で人間にあってAIにないものは、思いやり、愛、志、直感、過去情報の延長線上にない未来予測など。愛する力、志を貫く力、直感力、こうした能力は、自分の本質とつながることで、培われるスキルである。自分の本質とつながるには、「学生はこうあるべき」「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」などと言った社会通念を一つ一つ解放していかないといけない。社会通念を手放したときに、自分が本当にしたいこと、自分が得意なことが形を見せ始める。それが自分の本質とつながる、という意味だ。

自分の好きなことなので忙しくてもストレスにならないし、得意なことなのでそこまで努力しなくても結果を出せる。人との関係もよくなるし、所得だって増えるかもしれない。

Yukawa200213_2.jpgただ社会通念を一つ一つ外していくのは簡単な作業ではない。社会通念が自我の中に深く入り込んでいるからだ。多くの人は、社会通念が社会から植え付けられたものではなく自分自身でたどり着いた信念だと勘違いしている。そして社会通念が、自分の可能性を社会通念の枠の中に押しとどめようとする。

そういう人にこの本『人生の目的の見つけ方』(KADOKAWA)をお勧めしたい。著者の勝屋久さんは僕の友人だが、友人だという事実を差し引いても非常に価値のある本だと思う。

「心の欲求」を知ること

勝屋さんは長年勤めたIBMをリストラされ、苦悩の中で自分の本質とつながり、好きなことをして、所得もサラリーマン時代を大きく上回るようになった。そのすべての過程が詳細に記されている。繊細で複雑な感情や感覚の推移の言語化に、見事に成功している。

リストラされた人、転職を迫られている人、独立しなければならない人。そうした人生の転機を迎える人が今後増えてくるのだと思う。そうした人にはぜひ読んでもらいたい。

また冒頭に書いたように、自分の本質とつながることは、AI時代の最重要スキルになる。なので若い世代にも読んでもらいたい。

この本に書かれていることは、世の中の多くの自己啓発本の真逆の内容だ。今世の中は「深く考えて行動するのが正しい」という主張が主流だ。しかし深く考えるのはAIの得意領域。人間は「頭の中の思考」と「心の欲求」との違いを認識し、心の声を聞くべきだと思う。そうすることで、一人一人が唯一無二の形での自己実現を達成できるのだと思う。

僕は、勝屋さんのような生き方をする人が今後主流になっていくと思う。AIを使うのかAIに使われるのかの差は、自分の人生を生きるかどうかにある。ある意味、大きな価値観変化が起ころうとしているのだと思う。21世紀の最大の社会変化は、この価値観変化なのではないかと思う。

【著者からのお知らせ】
■優秀な仲間たちと社会課題を解決しよう
エクサウィザーズ の強みは、技術力xビジネスセンス。社会課題の解決に向け急成長中。エンジニアだけではなく、ビジネスサイドの人材も必要なんです。チャレンジ精神旺盛な方大募集です。
集え!社会を変えるウィザード達

20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUメルコスルFTAに暗雲、仏伊が最終採決延期で結

ワールド

NZ、今後5年は財政黒字化せず 景気低迷が重し

ワールド

ベネズエラ大統領がベラルーシ移住なら歓迎=ルカシェ

ワールド

アングル:物価高はトランプ氏のせいか、支持者が大統
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story