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AIを利用した創薬、新素材開発の時代がやってきた
Kebotix社も、同様に化合物のレコメンドにAIを使う考え。ただKebotix社CEOのBecker氏自身は、創薬にはまったく興味がないという。「化学の研究者には2種類のタイプがいる。1つは、薬を作りたい研究者。もう一つのタイプは、(物事を)爆発させたい研究者。私は完全に後者だ。政府のゆっくりとした新薬認可プロセスに付き合うつもりは、さらさらない」ときっぱり。創薬に関して多くの製薬会社からアプローチを受けているが、Kebotix社では創薬専門の子会社を作り、別の人間をCEOにする計画だと言う。
Kebotix社の開発した全自動実験装置の核になっているのが、Generative Machine Learning(生成機械学習)を使ったInverse Design(逆問題解析)と呼ばれる手法だ。
ニューラルネットワークの伝統的手法であるオートエンコーダーは、例えば入力と出力に手書きの数字の4を入れてエンコードとデコードを続けることで、真ん中の一番小さく圧縮されている隠れ層と呼ばれる部分に、4の特徴が残るという仕組みになっている。
この仕組みを応用し、入力にタバコを吸っている女性の顔写真、出力にアイシャドウをつけた女性の顔写真を設定すれば、真ん中の隠れ層に両方の女性の顔の特徴を持った写真が生成される。隠れ層の女性の顔写真は実在しない女性の顔写真だが、どれも女性らしい特徴を備えたものになっている。実在しない人間の顔写真を生成する技術として、少し前にニュースなどでよく取り上げられていた技術だ。
ハーバード大学の化学の研究者たちは、これを化学に応用した。入力にアスピリンを、出力にカフェインを設定。真ん中の隠れ層には、アスピリンとカフェインの特徴を残した化合物がいくつも生成された。あとは、この中から使えそうな性質や機能を持つ化合物を探し出すだけ。人間の化学者が一から生成するよりも、時間と労力を大幅に短縮できることになる。
この仕組みを作って同社が作り上げたのが、化合物を自動的に生成する全自動実験装置だ。同社では、それをKebotix Platformと名付けた。
人間は、求める特性をKebotix Platformに入力するだけ。あとはAIが、可能性のある化合物の構造データを無数に作り出し、別のAIが、その中から有望なもの数個に絞り込む。その構造データを基にロボットアームが液体もしくは気体の化合物を生成し、化合物が指定特性を持っているのかどうかの実験を繰り返す。実験の結果は、生成のAIにフィードバックされる。Kebotix Platformがこの試行錯誤のループを何度も回すことで、最終的には求める特性の化合物を作り出すことに成功するはずだとBecker氏は言う。
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