コラム

LINE、GoogleのクラウドAI戦略を比較してみた

2017年06月19日(月)14時00分

新たな可能性にはどのようなものがあるのだろうか。今回のカンファレンスでは、トヨタ、ファミリーマートとの提携が発表された。

LINEと提携したトヨタの幹部によると、自動車内のスピーカーがLINEのメッセージを読み上げてくれたり、音声をテキストに変換してLINEに送ることができるようになるという。

ファミマとの提携に関してはカンファレンスで詳しく語られなかったが、どのようなことが可能になるかを示唆するコンセプト動画が表示された。その中でユーザーがスマートスピーカーに「行ってきます」と声をかければ、「サンドイッチを買い忘れないでくださいね」とリマインドしてくれる。自動車に乗れば、カーナビが「1キロ先にファミリーマートがあります」とリマインドしてくれる。ファミリーマートの入り口でスマホをかざせば、サンドイッチが置かれている棚の上の方にあるディスプレイが点灯し、サンドイッチの場所を教えてくれる。サンドイッチを手に取れば、缶コーヒーをレコメンドしてくれる。缶コーヒーとサンドイッチを手に取ったことを店舗側のカメラが認識するのでレジで支払いする必要がなく、店を出た瞬間にLINE Payを通じて支払いが終了する。

まるで環境の中にAIが溶け込んでいくかのような感覚だ。事実、枡田氏は「環境のすべてがAIとつながっていく世界を目指す」と語っている。

Googleの機能を利用

一方のGoogleは、より多くのサードパーティを自社のエコシステムに参加させるために、自社技術を積極的に提供し始めた。

カンファレンスでは、Google Assistantを通じて出前を注文するデモが行われた。スマホでGoogle Assistantを立ち上げると、女性の声で「何か御用でしょうか」と聞いてくる。ユーザーが「パネラ(注:レストランの名前)に出前をお願いしたいんだけど」と語りかけると、今度は男性の声で「こんにちは、パネラです。配達の住所ですが、以下の2つのうち、どちらの住所への配達をご希望ですか?」と聞いてくる。

Googleがレストランに代わってユーザーの本人認証を行い、Googleに登録されているユーザーの住所を提供しているわけだ。

ユーザーが、画面に表示された2つの住所のうちの1つにタッチすると、今度は「どの料理をご希望ですか?」と聞いてくる。画面上に料理の写真が並ぶので、食べたい料理を教えると、「了解しました。お飲み物はいかがですか?」と今度は飲み物の写真を表示してくる。好みの飲み物にタッチする。

「了解しました。レジに進みますか?」「はい」と答えると、明細と合計金額が表示される。「この金額で注文を確定しますか?」という問いに対し、指紋認証で支払いを確定。「了解しました。ありがとうございました」と言われて、注文が確定した。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story