コラム

LINE、GoogleのクラウドAI戦略を比較してみた

2017年06月19日(月)14時00分

Googleの支払い機能、レシート発行機能が使われているわけだ。

GoogleのクラウドAIを利用することで、レストランなどのサードパーティは、こうした機能を自社で開発する必要もないし、個人情報を管理することもなく、利用できるようになる。

このデモはスマホ上で行われたが、同様のことが音声デバイス「Google Home」と、USBスティック型デバイス「Chromecast」を差し込んだテレビとの連携プレイでも可能だ。

コミュニケーションで差別化を図るLINE

さて類似点はこの程度にしておいて、相違点について見ていくことにしよう。

LINEは、円柱形のスマートスピーカーを最初に発売するが、今回のカンファレンスでは、LINEのキャラクターの形をしたスマートスピーカーも発表してきた。このキャラクターを載せてきたことが非常に重要なポイントだと思う。米国のメディアも「これがEchoに対する日本の答えだ」という趣旨の記事で、LINEの戦略を評価している。

発表の中にはなかったが、これらのキャラクターが「人格」を持ち、それぞれのキャラクターらしい受け答えができるようにAIを成長させていくのではないかと思う。今日のAI技術で、そうしたキャラクターの育成は十分に可能だ。LINEのAIは、こうした「人格」を持つようなキャラクターを育てるプラットフォームのようなものになるのではないかと思う。そのうちミッキーマウスや、ハローキティが受け答えするようなクラウドAIが、LINEのプラットフォーム上に登場するかもしれない。

欧米のクラウドAIが、秘書のような対話に終始する中で、より人間味のあるコミュニケーションを可能とするクラウドAIの基盤を作る。それがコミュニケーションを核としてきたLINEの強みであり、同社のクラウドAI戦略の最大の差別化ポイントになるのだと思う。

GoogleはAIで

一方のGoogleは、同社のカンファレンスで「AIファースト」を強調してきた。画像認識技術を中心とする同社のAI技術は、世界でもトップレベル。これがすなわち同社の差別化ポイントである。

カンファレンスでのデモでは、ライブハウスの看板に書かれたアーチスト名にカメラを向けるだけで、Google Assistantがアーチスト名を認識。アーチストに関する情報を入手したり、次のライブのチケットを購入したり、ライブの日時をカレンダーに書き込んだりする様子が、動画で紹介された。

スマートスピーカーGoogle Homeのデモでは、Google Homeが光っているので「どうした?」と聞くと、「高速道路が渋滞し始めたようです。14分前に出発されることをおすすめします」と言ってきた。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

解任後に自殺のロシア前運輸相、横領疑惑で捜査対象に

ビジネス

日産、米国でのEV生産計画を延期 税額控除廃止で計

ワールド

トランプ氏との会談、人質解放の取り組みなど協議=イ

ワールド

台湾、定例軍事演習「漢光」開始 司令部への攻撃を想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 4
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story